そんなのズルイ。10

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呆然とたった１人部屋に残されてその場に立ち尽くす。





……え、何から突っ込んでいいのか分からない。
冗談、だよね？






気が動転してしまい、落ち着かせようと無意識に指先を当てていたのは大事なネックレス。
そして考えるのはテヒョンさんの事ばかりで。






私、もう傍にいられないのかな。
ずっと皆の羽ばたく姿を見ていたかったし支えたいし少しでも力になりたいって思うのは欲張りだったのかな。






気づけばスマホを手にしていて無機質なコール音が耳に響く。
忙しいと分かってるはずなのにただ、ただ彼の声が聞きたいと自分勝手に電話をかけていて。






普段自分から電話するなんて無かったし感情を優先する事は一度だって無かったはずなのに。






…テヒョンさん、出るわけないよね……
今日は１日中撮影が入ってるって、









　
　




　
　

　
TH｢…………A、？…｣




｢…………あっ……テヒョンさっ……ごめんなさいっ
私っ……｣




TH｢……びっくりしたー。
んふっ。大丈夫だよ、一旦落ち着いて今は休憩中だし。｣



｢……よかった。いきなりごめんね。
ふふっ……お疲れ様…………声が、聞きたくて、｣




TH｢………………何かあった？｣




｢んーん。声が聞きたかっただけだよ。
……すごく落ち着く。私、テヒョンさんの声好きだな。｣




TH｢……えー声だけ？｣




｢……だめ。これ以上正直に言えば会いたくなっちゃうもん。ふふっ……我慢する。｣









　



　


　
　
まさか電話に出てくれるなんて思ってなかった。





でも、不思議。
声を聞くだけで本当に心から安心するし気持ちが穏やかになる。





あんなに気が動転していたのにやっぱりテヒョンさんって魔法使いみたい。






テヒョンさんはもうバンさんから
私が事務所に戻る事は無いって事は聞いたのかな。






……怖くて切り出せない…
でも今はあなたの声を聞けただけでも充分。
……きっと大丈夫、たくさん乗り越えてきたんだもん。







撮影の合間の短い電話。
でも、たったそれだけでも私をこんなにも奮い立たせてくれる。








……たくさん乗り越えて、私……ちゃんと学習した。
編集長のあの言葉に動じる必要なんてないんだ。
だって私はただひたすらにあなたが好きなんだもん。







さっきは動揺してしまったけれど、ちゃんとしなくちゃ。
スマホを握りしめて、ネックレスに指先を当てて前を向けば自然と背筋が伸びた。









　

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