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｢ねえ。俺汗かいたよ｣
｢うん｣
｢シャワーとか浴びてないし｣
｢うん｣
｢いま一番ひどい状態｣
｢…うん｣
ただその言葉すべてに相槌を打っていると、
太一が肩口からゆっくりと顔を上げた。
｢うん、て……｣
自分から言い出したくせに。
少し拗ねたような口調で私の方をじっと見てくる。
至近距離で目が合う。
やばい。心臓の音聞こえてしまいそう。
もしいま人が来たらこの光景は大変だな。
そこの学生、不純だぞ！！って学校に通報されるかもしれない。
えーやだな。怖いな。でも離れたくないな。
こつん、と私の額に太一が額を合わせてくる。
｢本当は手繋ぐのをご褒美にするもりだったんだけど｣
｢……うん｣
｢ちょっと欲張っていい？｣
それがどういう意味なのかを言われなくても、
何となく分かった気がして。
うん、と小さく頷く。
顔を包み込むように大きな手が添えられ、
ゆっくりと目を閉じた。
太一のジャージを掴んでいた手に力が入る。
大丈夫。私たち以外誰もいない。
車も、人も、さっきから通らないし、
周りには住宅も民家もお店もない。
あとはそれを受け止めるだけ。
目を閉じて近くにある太一の熱を感じた。
そっと優しく、まるで大切なものに触れるように、
太一の唇が私のそれに重ねられた。
なんだか今日はとても濃い1日だった。
まるで夏休みとクリスマスとお正月が一気に来ました！！
というくらいの展開っぷりだ。
そっと重ねられていた唇が離れて目を開ける。
何だかニヤニヤしてきて必死に口を閉じようとする。
｢……なんですか｣
｢んふふ。なんかニヤけちゃって｣
そう言うと太一は私の鼻をつまんで笑い返してきた。
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作者名：nome. | 作成日時：2017年2月12日 0時
