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太一と手を繋いで、少し遠回りして帰る。
拝啓 過去の私へ
あんたいま大好きな太一と手繋いで帰ってるぞ。
幸せというものをその身で感じてるぞ。 敬具
｢あ、星出てる｣
｢ほんとだ一番星だねえ｣
紫がかった空に光る、点のような星を2人で見上げて顔を見合わせては笑う。
……しかし、
ご褒美ください。って太一は言ってたけど、
むしろ今の状況は私の方がご褒美な気がする。
太一の手おっきくて指長くて、
なんか全体的に薄くて、ああもう好き。
この手であんな硬いボール止めてんの？？
……やばいまた興奮してきたぞ。
心の中で太一への好きが大洪水を起こした。
しばらく他愛もない会話をして歩いていると、
あまり人通りの少ない道へと来た。
うん。一体どこだい此処は。
｢……迷ったかも｣
｢おいおい頼むぜ、川西くんよ｣
｢なにその言い方｣
ははっと力なく笑う私に対して、
｢まあ、ウロウロしてたら戻れるでしょ。｣と太一は焦りもせず手を引いてまた歩き出した。
｢これ帰れなかったら野宿だね｣
｢Aさんと野宿とか身の危険しか感じない｣
｢いやこっちの台詞だわ｣
そう言ってわざと太一の腕に体をぶつけると、
痛くもないくせに、いたーい。と目を細めて笑った。
でも次第にその顔からは笑顔が消えていき、
なんだか悔しそうな悲しそうな顔になった。
｢今日、応援ありがとうございました｣
ぴたりと足を止めて私と向き合うような形で言う。
｢たいち……？｣
｢最後、10番止めようと思ったんだけど｣
その声はどこか弱くて、苦しそうで、
｢止められなくて、すみません｣
ちょっぴり鼻声だった。
気づけば勝手に体が動いていて。
繋いでいた手を離しては太一の首に腕を回してぎゅっと抱き寄せた。
｢大丈夫だよ太一｣
｢…………｣
｢精一杯やったのならそれで充分｣
｢…………｣
｢頑張ってくれてありがとう、本当にかっこよかった｣
｢…うん｣
抱きしめる力を強くしてそう言うと、
それに応えるように太一も私の体を強く抱きしめた。
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作者名：nome. | 作成日時：2017年2月12日 0時
