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お疲れ、と太一がその場で他の部員たちと別れる。

そしてこちらへと近寄ってきた。



涙目になっている私や友人、隣でミンミンの顔を見て
また私の顔をじっと見つめる。





ん?……なんだ??









「瀬見さんに泣かされたんですか」






ハァと呆れたようにそう言い放つ。

やれやれと言いたげな表情だ。







「は、ちっげぇよ!!」


「違う違う。私たちが勝手に泣いちゃったの」







焦って否定するミンミンに友人と顔を見合わせながら笑う。


すると太一は、あ、そうなの?といつもと変わらない調子で返事をした。









あれ。意外と普通……??




試合が終わってコートから出るとき、

私の記憶がおかしくなければ確かに太一は泣いていた。



悔しそうに。どこか堪えるように。








太一の顔をじっと見つめていると目が合って。

なに?と弱々しく微笑まれた。








「よし。川西くんも来たことだし帰ろう瀬見くん!」


「おう。あっ待て引っ張んな…!」






友人がミンミンの腕を引っ張りながら、そう大きめの声で言う。


そしてチラッとこちらを見ては笑顔で小さく頷いた。







「あとは2人でごゆっくり。
川西くん試合お疲れ様。Aをよろしくね」


「あ、はい。あざっす」


「ありがとう。ミンミンもお疲れ様」






なんかごめんね。ありがとう。

そう心の中で友人にお礼を言った。




ミンミンが何やら騒ぎながらも二人は早々と帰ってしまって私と太一の2人きりとなった。







「帰ります?」


「うん。帰ろっか」






特に約束をしてたわけでもないけど太一は珍しく素直に誘ってくれた。



嬉しすぎて満面の笑みでそれに応えた。











*








学校の正門を出てからも、

太一はいつもと変わらず飄々とした様子で。



私の頭の中にはまだユニフォーム姿の太一が強く残っていた。








「試合疲れた?」

「うん。すっごい疲れた」





「私の応援聞こえた?」

「Aさんの声は1回聞こえたかも」





「叫びすぎて声枯れちゃった」

「すっげえガラガラだもんね。ウケる」







横に並んで歩きながら応援席でのことや、

試合中のことをお互いにいっぱい話して微笑んだ。

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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時

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