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「落ち着きました?」


「うん…ありがと…」






しばらく泣き続けたあと、

少しずつ落ち着きを取り戻してきた私の背中を

太一がトントンとあやす様に撫でる。







すん、と鼻をすすりながら、

ゆっくりと太一の肩口から顔を離す。









「……げっ、」









その肩は、私の涙でびしょ濡れになっていて思わず声を上げる。






太一は私の声でその状況を察したのか、

「ウソでしょ…」ととてもイヤそうな声で応えた。







「だ、大丈夫、鼻水はつけてない!」


「当たり前っスわ」








体を離して服の肩口の状況を確認すると、小さく溜め息をつく。


そして、そのまま私の顔をジロリと見つめてきた。









「びしょ濡れ。」


「ご、ごめん…」


「今からまた部活行くのにー。」


「本当にごめんよ…太一」







せっかく想いが通じ合ったのに、

さっそく太一を怒らせる羽目になるとは…





内心ヒヤヒヤしつつ何回も謝ると、

ポンと頭の上に手を置かれた。









「まあ、いいですよ。下にも着てますし」


「太一…」








優しく微笑む太一を、まっすぐに見つめる。








なんだろう。この、甘えたくなる感じ。

私のほうが太一よりも年上なのに。







「好き」という感情を解放した途端に、


今まで太一との関係を気にして抑えていた
自分のなかの欲張りな部分が出てきているのかもしれない。







好きになるって、なんか怖いなぁ…

そのうち変な要求とかしちゃうのかな…





まじまじと太一の顔を見ながら、

そんな事を考えていると太一が鼻で笑った。








「なに想像してんすか」


「えっ、いや、」


「うわ、やだこの人。やらしー」


「どこがよ、失礼な!全然違うもん…!」


「ハハッ、はいはい」







両想いだという事が分かって、

この先どうなるのか不安なところもあるけれど、





こうやって太一と笑い合えるっていうのは本当に幸せだ。







もう、関係を気にして我慢しなくてもいいんだ。

太一に面と向かって「好き」と言っても大丈夫なんだ。






そう思うと、なんだかホッとして、

体の奥のほうが温かくなったように感じた。

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作者名:nome. | 作成日時:2017年2月12日 0時

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