小人の家政婦 2

事情 ページ22

目の前には、真っ二つになった紙切れと、

女の人の笑顔。


…本当に意味が分からない。


「今この瞬間、この契約はなかったことに

なりました。なので、あなたのしたことは

何ら契約に反していません。

数十分の誤差なんて大したことありません」


清々しく言い放っているが、

マネージャーさんの顔は引きつっていた。

話の流れは未だ掴めないがどんな理由があれ

契約用紙を破っちゃいけないことぐらいは

私にも分かる。


「そして、これが新しい契約用紙です。

私達は貴女を拒みません…きっと彼らも」


意味不明な言葉と笑顔を残し、

女の人は立ち去っていった。


「ええっと…とりあえずまあ、そういうことだ」

『いや、分かりません』

「だろうな。とりあえず、座れ」

『はい、』


机に向かいあって座る。

私、何しにここに来たんだっけ…


あ、そうだ、仕事を辞めに来たんだ。

口を開こうとしたが、女の人が置いていった

紙に目を奪われた。

新しい契約用紙って、どういうことだろう…


『これって、』

「新しい契約書だ。よく読んで…

いや、その前にちゃんと説明しないとな。

この頃、仕事の時間が不規則だったよな？」

『はい』

「メンバーのソロ活動が活発になったんだ。

それに伴ってオフもそれぞれ不規則になって

それぞれの行動をリアルタイムで把握する

事が難しくなってきた。

Aさんとメンバーが鉢合わせしてしまう

ことも目に見えていたんだ」


駄目だ、真剣にきいてはいるものの話が

見えない。


「メンバーとのコミュニケーション禁止、

これは事務所が出した条件なんだが、

いつか絶対守れなくなる。そうしたら多分、

Aさんは仕事を辞める」

『…はい』

「でも俺は、それが惜しかったんだ。

スンチョル…いや、リーダーに話をきいたら、

家政婦のことをべた褒めしていた。

料理はいつも美味しいし、部屋は綺麗だし、

皆家に帰るのが楽しみになっていると」

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