検索窓
今日:7 hit、昨日:11 hit、合計:70,763 hit

他に何も要らないから ページ24

その日の夜、呆然としていた私は思い切って英に連絡しようと試みた。


不安だけれど、今は情報不足だし、目の前で起きたことが必ずしも事の真相と同じとは限らないから。



と思って文字を打とうとすると、やはり手は震えた。





仕方ないから通話しよう、と通話ボタンを押す。





「もしもし?」





思いのほか早く出た彼の声に安堵して、私は鼻をすすった。


何かを誤魔化したい気持ちもあったけれど。





『ふふ、声…聴きたくて。』



「なに急に。」





素っ気ない言葉なのに、いつになく柔らかい喋り方の英。


こんなに優しい声色をしていたのだといつもの自分を客観的に見る。


ついでに過去の私に、『そんなに冷たくないよ。』なんてツッコんでみる。





『…ねー、あきらー。』





思わず本題を口に出してしまいそうになって、慌てて口を閉じる。


決して、悟られないようにしないと。


もしシイナとのことが本当なら、気づいて欲しい訳じゃないだろうし。



自分に危機が迫っているというのに、

こんなに冷静に物事を考えられるのは何のせいなのか、幼稚な私にはまだわからなかった。





『……好きって、言ってくれない?』





うざいことなんて承知の上。


もしこれで嫌だとか言われたらそれでいい。


それ以上の感情が私に無いことがわかるから。



…きっとすぐに離れていけるから。





などと思っていたのに。





「…好きだよ。はは、いきなりなしたの。」





それはとても…とても優しくて。


雪が降りかかるように静かに落ちてくる声で。





『ううん。ありがとう。私も大好きだよ。』





身体の中にすーっと入ってきて、私の涙腺を揺らす。





通話を切って、しんとした部屋のベッドに体育座りをする。





『っ、なんでそこで好きって言うのさ…』





私のことを何度振り回せば、

この男は気が済むのだろうか。





それとも私が勝手に、

彼の手のひらで転がっているのだろうか。





目から流れる涙に問う。





辛くて悲しいはずなのに、まだ希望を捨てられないのだ。

意図→←愛の偏り



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (116 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
218人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

yuiki(プロフ) - 雪見ユキバさん» うわああありがとうございます!頑張ります!!! (2019年11月27日 17時) (レス) id: ecc4c0e98e (このIDを非表示/違反報告)
雪見ユキバ(プロフ) - もう好き…大好き…更新頑張ってください…いつまでも待ってますんで… (2019年11月27日 16時) (レス) id: 29b8aaca97 (このIDを非表示/違反報告)
yuiki(プロフ) - ひなたさん» ありがとうございます…!更新ペースあげられるように頑張りますっ (2019年11月25日 17時) (レス) id: ecc4c0e98e (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 国見氏かわえぇです…次も楽しみにしてまっす (2019年11月25日 16時) (レス) id: 755c13a381 (このIDを非表示/違反報告)
yuiki(プロフ) - 妖精さん» そう言って貰えるとすごく嬉しいです!!先の展開はまだ分からないので、是非読み続けて下さい! (2019年11月12日 4時) (レス) id: ecc4c0e98e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:yuiki | 作成日時:2019年10月27日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。