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その日は授業も友達の話も全く耳に入らなかった。お陰で葵に心配されてしまった。どうして、こういう時に限って時間が進むのが遅く感じるのだろう。
はやく、はやく、はやく。放課後になったら皆で屋上に行って篠木さんを助けて、それで、会えなかった分を埋めても溢れちゃうくらい、沢山お話をするんだ。
一緒に恋バナをして、お菓子も作って、お休みの日にふたりだけでお出掛けもしたい。誤解を解いて、花子くんと篠木さんがまた前みたいに笑ってるところも見たい。
ねぇ、篠木さん。私、あなたとやりたい事が沢山あるんだよ。
だから、ねぇ、そんな……。
「……篠木、さん」
そんな顔、しないで。
「八尋さん……」
たった二週間会っていないだけなのに、彼女は随分痩せたように見えた。顔色は悪くて、今にも倒れてしまいそう。一層細くなった首には、離れていても分かるほどくっきりとした手形が着いていて。――まるで、首輪みたいだ。
「篠木さん、私達ね、篠木さんの事助けに来たんだよ。ねぇ、一緒に行こう？また、沢山お話しよう？だから、だから……」
声が震える。視界が歪む。そんな私を見かねたのか、光くんがぎゅっと手を握ってくれた。彼の手も、小さく震えている。
「そんなとこ、危ないよ。落ちたら、死んじゃうよぉ……」
ぼろぼろ。遂に、堪え切れなかった大粒の涙が溢れ出す。伸ばした右手は彼女に届かずに空を切った。
私達と彼女の間には、大きな柵があって。それは本来、屋上から落ちないように、安全の為に建てられたもの。私達の安全は守ってくれているのに、彼女はそれに含まれていない。
だって、あと一歩でも踏み出せば。急に突風でも吹けば。彼女の華奢な体は、ここから放り出されてしまう。
「いや、いやだよ篠木さん……。ねぇ、戻ってきて？私、沢山篠木さんとお話したいよ。まだ篠木さんの事、Aちゃんって呼べてないんだよ」
どんなに言葉を掛けても、彼女はこちらに来ようとしなかった。ひゅう、と風が私達の頬を撫でる。風が吹く度にどくどくと心臓が激しく波打った。それが彼女が落ちて消えてしまうカウントダウンに聞こえて、今にも発狂してしまいそう。
「……シノ、ギ」
それまで言葉を発さなかった花子くんが弱々しく彼女の名前を呼ぶ。ぴくん、と小さく反応した肩に、私達の心に光が差した。
声が届いている。なら、まだ説得出来る！
「ザンネン、時間切れだよ」
愉しげな笑い声と共に、その、細い、両肩が__
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埜々(プロフ) - 名前さん» ありがとうございます。本当は比翼の鳥のお話を知らなくても分かるように進めたかったのですが、私の文章力では難しかったのでこういう形になってしまいました。ですが、とても素敵なお話で私も大好きなので、知って頂けてとても嬉しいです。 (2020年3月6日 23時) (
レス) id: 63e33ac70b (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 比翼の鳥と連理の枝の意味調べて物語をさーっと読みました。その後にこの小説を読んだら1回目はよくわからなかった所も理解出来ました。1回目とは違う読み方ができて面白かったです！ (2020年3月6日 10時) (レス) id: c734d9dcec (このIDを非表示/違反報告)
埜々(プロフ) - 名前さん» ありがとうございます。とても嬉しいです´`* 情景描写は苦手で、いつも試行錯誤しているのでそう言って頂けると頑張った甲斐がありますね。遅めの更新になると思いますが、頑張ります (2020年3月3日 21時) (レス) id: 63e33ac70b (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 面白くて前作から一気読みしちゃいました！情景描写がとても上手で状況がわかりやすいので感情移入もしやすくてすごく良いです！更新頑張ってください！！ (2020年3月3日 11時) (レス) id: c734d9dcec (このIDを非表示/違反報告)
埜々(プロフ) - 夜廻さん» ありがとうございます。前作から読んで頂いているんですね……。とても嬉しいです´`* (2020年3月1日 20時) (レス) id: 63e33ac70b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埜々 | 作成日時：2020年2月29日 23時
