僕の上司 ページ1
僕の上司は気が弱い。
気が弱いというよりも、圧に弱いというかなんというか。
仕事はそれなりにこなせてはいるのだけれども、失敗をとにかく恐れているようだ。彼にプレッシャーなんぞかけてしまえばミスは多発し、そのミスが彼の精神面に影響してまたミスが起こる。彼自身はもちろん、会社のためにも僕や彼の同僚が必死でサポートをしなければならない状況なのだ。
こうして紹介をしている間にもきっと彼は僕に助けを求めに来る。
「ね、ね、せーくん」
ほら来た。
ふわふわとした天然パーマに、日本人にしては明るめの髪色。四角い黒縁メガネの奥に見えるのは、重たそうな瞼。ぴしっと着たスーツが彼のふわふわとした雰囲気とは不釣り合いだった。
「何ですか柳さん…また夜更かししましたね」
「あ、バレちゃった」
「そりゃそうですよ」
いつもあなたのこと見てるんですから。
言いかけた言葉は飲み込んで、要件を聞いた。
どうやらパソコンのソフトの使い方を確認したかったようだ。
「この名前で、ここのファイルに保存で良いんだよね…?」
「あってますよ。この前も同じことしたじゃないですか」
「せーくんに聞くと確実だし、安心するから…」
へにゃ、と笑う姿が何とも愛おしい。これで今日も頑張れる。
彼に物を教えるのは嫌いじゃない。むしろそれが楽しみで会社に来ている。
もうお分かりだろうが、僕は彼のことが好きだ。
初めは、正直関わりたくないと思った。
ミスが多い日もあれば全くない日もあり、おまけに妙におどおどしている。変な人だ、この人が僕の上司なのかと考えると、先のことを想像してゾッとしたこともあった。
それでもやはり目が離せなくて、世話を焼いているうちに僕の方が彼に懐いてしまっていたらしい。
彼が会社に残れているのも、この憎めない性格のおかげなのか。
そんな彼の、心を許した相手にだけ見せる表情。僕はそこに惚れ込んでしまった。
もちろん彼には、こんなことまで教えてはいけない。
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和風味噌和え丼(プロフ) - らいふさん» コメント、そして嬉しいお言葉誠にありがとうございます!読んでてほっこりできるようなお話が書きたかったので、そう言って頂けて本当に嬉しいです…!更新ペースは遅めですが、これからも何卒よろしくお願いします。 (2017年11月22日 4時) (レス) id: 7ade5801cb (このIDを非表示/違反報告)
らいふ - ほわほわしてて、とてもほっこりしました。Rが付くようなお話は、苦手なもので、楽しく読ませていただきました。 次話も楽しみに待っています。 更新、頑張ってください!! (2017年11月22日 1時) (レス) id: 378f2d202e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和風味噌和え丼 | 作成日時:2017年9月10日 23時