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5話 ページ5

長い沈黙を作り出したのは私で

それを意を決したように静かに破るのも私だった


『…あのね、敦くんに二次会終わりに時間あるか聞かれたの』


千「なんだよ、脈絡もない…」


『きっと、長い間すれ違ってばっかりで、それでもお互い気になっているのは変わらないんじゃないかな。 だから何かしら伝えたくて、時間をくれって言ってくれたんだと思うの』


千「…あぁ、きっとそうだろうな」



ごめんね松野。

こんな話、あんまり聞きたくないだろうね。




『こんな私でもやっぱり一緒になりたいって言ってくれるんじゃないかって思う反面、もしかしたら近況報告ってことで他の誰かとの結婚話かも…なんてずっとぐるぐる考えてる』



千「らしくねーの」


『敦くんにはいつも戸惑ってばかりだよ。

私なんか至らないんじゃないかって』



本日何度目かわからない松野のため息はなんだか悔しそうにも聞こえるのは

どういった感情なんだろうか



千「…そうは思わねぇ、って思ってるやつのが多いと思うけど」


『ほんと? そう思う?』


千「思う思う、どんだけお前らの関係見てきたと思ってんだ」


『そっか、松野に言われるなら大丈夫そうね』



少し適当にも聞こえる松野の返答に

私は少し笑みがこぼれてしまう。



千「何だよ…何か企んでんのかよ。

やけに素直じゃん」


『別に! でもさ、高校の頃から変わんないなって』


千「何が」



『私がシャンとしない時に限ってアンタが側にいて背中蹴り上げてくれんの!』



食い気味に伝えた言葉に

いつもの嫌味なんて一切無いストレートな感謝を織り交ぜたのが感じ取れたんだろう

松野は面食らったように一度固まった。


千「そこまでの勢いねぇよ、被害妄想」


ポツポツと気を使うようにそれでも憎まれ口を叩く松野に私は言葉を続ける。



『押すよりも強めなだった気がするんだけども?

…でも、そのくせ、全部終わったら肩貸してくれんの』



なんだかんだ面倒見のいい松野に背中押してもらんないと自信が持てないなんてさ…


私はその優しさにずっと寄りかかってしまう。

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作者名:graybear | 作成日時:2023年5月7日 22時

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