ページ ページ9
『ありがとうございました｡
なんだかお母さんと向き合えたような気がします』
冷たい水で引き締めた表情でお礼を言い直した｡
目がショボジョボするのはきっと擦り過ぎと
水を容赦なく打ち付けたことによる充血だろう｡
「なぁ､A｡
オレと初めて会った日のことだけど…」
悲惨な私の顔を見つめながら
意を決したように何かを告げようとするイザナさん
「てめぇ､なにA泣かせてんだよ」
言葉の核心部は聞き馴染んだ怒声によって
遮られてしまった｡
『え……圭介兄!』
｢
『あ､いや…家が近くてご近所付き合い長いし､
小さい頃からずっと一緒にいるから
お兄ちゃんというか､兄貴分とういか…』
「あぁ､そのことか…知ってるぜお前のこと｡
マイキーの腰巾着の一人だろ｡
なぁ､東卍の壱番隊隊長 場地圭介」
イザナさんが話し始めると誰とでも
不穏な空気になるの不思議なんだよなぁ｡
めっちゃ怖いもん､目がこう…カッてなってて｡
「マイキーとは幼馴染だ｡ Aともな｡
俺の事はどうだっていい…質問に答えろ」
「…俺が泣かせてたらどうだって言うんだ」
『圭介兄! 大丈夫､イザナさんは…!』
「いいよA､俺が話しつけるから」
いや､圭介兄喧嘩っ早いからイザナさんが
危ないんだけど!!
「兄貴分として､妹分に何かあったら
首突っ込まないわけにいかねぇんだわ」
『ちょっと､圭介兄睨まないで!
イザナさんも挑発はやめて!
ここ静粛な場所だから､ちょっ､距離詰めないで!!』
「へぇ､兄妹思いなんだな｡
…それとも､もっと違う感情か?」
「ごちゃごちゃ何言ってっか知んねぇけど上等じゃねぇか｡ 話通じねぇなら､こっちで話すんが1番だろ?
横浜天竺総長､黒川イザナ!」
『天､竺…?』
って西遊記の?
たしか､幸福をもたらす極楽の国?
国…
俺の､国を作る…
『イザナくんの国?』
「は?」
「…っ」
『…私それ聞いたことある気が』
少し考えるように小首を傾げ
目を閉じ記憶を引っ張り出そうとする
「あ? 天竺は国じゃなくてチーム名だわ｡
東卍と敵対する横浜最強勢力」
間髪入れずに圭介兄の声がして考えることを
中断してしまった｡
『ひ､イザナさん暴走族!? しかも総長!!』
「(さん付けに戻った)
そ､万次郎とは敵」
イザナさんは少し私に驚いたような表情を向けていたけど､すぐにお得意の不敵な笑みを零したのだった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：graybear | 作成日時：2024年1月11日 21時
