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それから途中にしていたお墓参りを再開した。

軽い会話もそこそこに
線香の背丈が半分以下になった時分


『ありがとうございました』


「何が? 俺が勝手に着いて来ただけだ」


玄関で顔を合わせた時、
イザナさんが驚いたように私を見ていた事を思い出した。


『でも、いろいろ手伝ってくれたじゃないですか』


ここまで付き添ってくれた事も、
過去の記憶を思い出せなくても怒らなかった事も、
知らない間にたくさん心配させてたんだろうな。

イザナさんはなんて事ない風に振る舞っているけど、
真一郎さんが言う通りあまり思った事を口にしないん
だと思う。

ちゃんと玄関先での事は弁解しないと
変に気を遣わせたままになってしまう。


『私、本当は怖かったんです。今日、1人でここまで来る事が。

だから、母に会いたいって言ってくれて嬉しかったんです』


「別に…ここに来る予定あったからついでだ。

てか、毎年1人で墓参り来てるヤツが怖ぇ事ねぇだろ」


『お墓前り自体は怖くないんです。

…私、よく母の夢を見るんですよ。

そのほとんどが母との楽しい記憶の夢で、
怖いなんて思ったことは一度も無かった。

だけど今日は…何かを伝えているような夢で、
なんだか母の期待通りの私になれていないような気がして、
ちょっと落ち込んでたんです』


『問題ないので心配しないでくださいね』
そう結びつけるような言葉を持って行こうとしたつもりが
ただの弱音になってしまった。

今からでも言わないと。
一緒に居てくれたお礼ともう怖さは薄らいだ事を。

余計、変な心配をさせてしまう。


「お前が(それ)に従う義理なんてねぇだろ」


焦るように言葉は喉まで出かかったが、
ひと足さきに声を発したのはイザナさんだった。


『…母は私の憧れなんです。

強くて、キレイで、理解してくれる父が側にいて、
何事にも熱意を持って接する人だった。

いつか母みたいに何でも持っている人になりたいんです。

でも今の私ときたら…
お節介だけど支えてくれている人達がいるのに

母ほど勉強もできなければ、心も体も強くなりきれない。

きっと戒めというか。
案外そういうのが夢枕に出たんじゃないかと思って』


だんだんと俯く私に返って来る言葉はなかった。

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作者名:graybear | 作成日時:2024年1月11日 21時

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