幼馴染コンプレックス共の妹扱いが傍迷惑すぎる｡その3【東京リベンジャーズ】 (ページ6)

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『自分では覚えてないなんて思ってもみなかったんです｡

事故で1ヶ月ほど昏睡状態だったのは
目覚めてすぐ父から聞いたんですけど､
脳や記憶に支障はないって言われていて…』

口から出る言葉は何を言っても
なんだか言い訳みたいに聞こえて
悪いことでもした人かのように視線は下を向いていく｡

そんな私を諭すように見つめるイザナさんは
静かに口を開いた｡

「一応､マイキーや真一郎からは聞いてたんだ｡

Aが俺のことは知らない素振りをしていた事｡

そんな状態で母親に不幸があって､
目が覚めたら重体だっただけでも辛ぇのに

記憶も失くしてるなんて知ったら混乱するだろ｡

だから､俺は顔出さなくて良かったんだよ」

知らなかった自分の過去に唖然としつつ
お礼を言うべきか､迷惑をかけた事に謝罪を述べるべきか､
言葉を探して口を開閉するだけの私

そうこうしている私を見かねてか
「ま､俺もすぐに会いに行ける状況じゃなかったからな」と､小さく付け加えたイザナさん｡

『そう､だったんですか…

それでも､なんだか遣る瀬無いです｡
せっかく約束のこと､信じて私に会いにきてくれたのに…』

やっと出た私の申し訳ないという意志のみをのせた言葉は
軽いため息一つで吹き消された｡

「さっき言ったろ､別にAに悪気がねぇんだから
そんなに思い詰めた目を向けんな」

『…はい』

「街中で俺の名前を呼んでくれたあの日｡
少しでも記憶が戻ったんじゃないかって思えたんだ｡

それ､確かめたくてわざと言ったことだから
昔の事なんて気にすんな」

表情はいつも読めないけど､
ぶっきらぼうに伝える言葉の声は優しくて
私への配慮と思いやりを感じる｡

「お前が俺のことをこれから
知ってくれたらいいだけの話だろ」

本心が見えにくい人だけれども

『イザナさんは優しいんですね』

こんなにも良い人をなんで忘れてしまったんだろう｡

「そんなん言うの昔からお前くらいだわ」

長いまつ毛を少し伏せながら薄く笑う姿は
青空を背に透き通るように咲く夏の白花を彷彿とさせた｡

それは2〜3日もすれば綺麗なまま散ってしまう花｡

故にどこか儚げに思えてしまい､
その危うさに私は息を呑んで少しの間動けなくなるのだった｡