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「やっほ､A!
にぃがAのとこ寄ってから行くって
言ってたけど､まさか一緒に来てただなんて意外!」
イザナさんの方を見ながら笑いかけるエマに
彼はそっぽを向く｡
『うん､今年は行くの遅くなっちゃってね｡
イザナさん､いろいろ手伝ってくれたの』
「…へぇ､そういうことか」
「なんだよ万次郎､その目は」
「別に? Aの事ありがとな､イザナ」
「うぜぇ｡ こんだけ人居んならもう大丈夫だろ｡
じゃあなA」
イザナさんは出入口ではなく墓石が連なる奥へ行く｡
向こう側に佐野家のお墓があるからそっちに向かったのだろう｡
私も後で寄って行こうかな｡
私に付き合ってくれたのはどのみち此処に来るから､
ついでにお母さんに手を合わせてくれる為だったのだろう｡
他のみんなもお線香を立てて､
それぞれのタイミングで手を合わせてくれている｡
ただ､ついでだとしても改めてお礼を伝えておきたくて､
背を向けて行ってしまいそうないイザナさんに慌てて駆け寄った｡
『あの､イザナさん! 今日はほんと､ありがとうございました!
後日なにかお礼を…』
「イザナくん」
『へっ』
「さっき呼んだみたいに､そう言えよ」
『え､あれ? 私そんな風に言いましたっけ…?』
困惑している私を他所目にまたしても
含みのない笑みが落とされる
「次会う時までに言えるように練習しとけよ｡
礼ならその時でいい」
『う､うん?』
たじろぐ私はまたしてもあの表情に成す術なく固まってしまう｡
そしたらエマが興奮気味に私の右肩を揺さぶってきた｡
「なになになに!? Aとにぃってそういう感じなの!?」
『いや､どうもこうも…っ! やっぱなんでもない!!』
ボロボロに泣いたり､弱音吐いたりで凄く情けない姿を晒したことをお思い出して､今更ながら恥ずかしさで熱がみるみるうちに顔へと集まっていく｡
「え〜! マジじゃん! ちょっと今度詳しく聞かせてよ!
ヒナや千咒にも言わなくちゃ…緊急女子会!!」
「おい､エマ違ぇ｡ あいつはストーカーだ｡
よくわかんない手口使ってAを唆してる」
「はぁ? Aとマイキーのストーカーやってる春千夜には
言われたくないから」
「ストーカーじゃねぇ､護衛だ」
『……』
結局､お母さんの言葉を思い出すことはできなかった｡
でも怖さとか後めたさは
夕方が差し迫っているにも関わらず
未だ透き通る夏空に飽和し消えて無くなっていった｡
そんな気分だ｡
▼女子会でみっちり聴取された｡
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作者名：graybear | 作成日時：2024年1月11日 21時
