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近くまで来て、気まずそうに目を逸らす。
「 ごめん…っやっぱり、俺、どうでもよくなんてなって欲しくない……っ、ヒョンが好きだから、他の人に取られたくもない…！幸せにするのは俺がいい… 」
「 ………、その言葉が聞きたかった 」
ニコニコしながら、そう言う。
「 テヤンはもっと強欲になっていいんだよ。だって僕は、テヤンの恋人だから 」
「 ……うん、」
「 え、泣いてるの？可愛いとこあるじゃん… 」
服の袖で頬を吹いてくれる。
今日のヒョンは、いつもよりお兄ちゃんみが増していて、すごく甘えたくなった。
「 ……てか僕だってテヤンのこと取られたくないんだからね！誰かと駆け落ちしたらだめだぞーー 」
「 駆け落ちっていつの時代…… 」
「 浮気もダメ！ハグまでなら許す！！！ 」
「 分かったその代わりヒョンにたくさん愛情表現するから 」
「 んえ！それは聞いてない…… 」
恥ずかしがるヒョンを見て、やっぱりいつものヒョンだなと思った。
フィヨンにキスされたことは言わなくていいか。
これからは俺も気をつけなきゃ。
その日もヒョンのベッドで身を縮こませながら寝た。そして相変わらず彼の寝起きは悪い。
「 ……おはよ、 」
くぁ、と欠伸をしながら、眠たそうに目を擦る。
「 あ、そうだ。ロウンに聞かなきゃいけない事があって……すぐ仕事行っちゃうから、行ってくる！ 」
「 ……ん、行ってらっしゃい 」
そう言って手を振って見送る。ここ俺の部屋じゃないけどね。ヒョンと仲直りしたから、すごく気分がいい。
結局問題が増えてしまったんだけど。
フィヨンはどう思ったんだろう。きっと傷付いたんだろうな。でも、仕方ない。同情で付き合えるほど簡単なことではない。
部屋から出てリビングに行くと、インソンヒョンがスマホを触りながらコーヒーを飲んでいて、少し気まずい。
そろりそろりと足音を立てないように歩いていたら、振り向かれてビクッと肩が揺れてしまう。
「 おはよ 」
「 おはよう 」
挨拶を交わすだけで、そのあとは沈黙が流れる。気まずくてコーヒーを持ったまま居なくなろうとしたら、引き止められた。
「 ……テヤン 」
「 ………何？」
「 ごめんな、もう邪魔はしないから 」
その一言に背を向けたまま、思わず黙ってしまう。
邪魔、か。
「 ……ダウォナの、あんな幸せな顔、俺初めて見た 」
振り返って、へ？と声を出す。
インソンヒョンの前ではいつも幸せそうだったよ？
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作者名：凪緩 | 作成日時：2022年8月21日 8時
