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腕をぎゅっ、と掴まれて、振り返った。
苦しそうなテヤンの表情が胸に刺さる。
「 どした？！ 」
「 ……、インソンヒョンのこと好きになっちゃうの？ 」
「 ………え、？ 」
「 ヒョンはもし、俺とインソンヒョンが死にそうだったら、どっちを助けてあげるの？ 」
その問いかけに、答えることが出来なかった。
テヤンはなんでいきなりこんなことを言うんだろう。
困っていたら、後ろから抱き締められた。
「 もー！来ないから俺が来ちゃったじゃん…って、2人とも暗い顔してどした？ 」
テヤンはその瞬間を見て、「 ごめん 」と言って走っていってしまった。
「 …？俺なんかしたー？ 」
「 ヒョンは空気が読めないの？ 」
「 えっ俺ってKY？ 」
「 たぶんそう。面白いからいいけど。テヤン、ヒョンに嫉妬してたかも 」
「 え、俺に？！俺なんていつもテヤンに負けてんのに。だってさ、今俺がお前に好きって言っても好きって返ってこないんだよ？ 」
「 ……ヒョンが女の子にモテない理由がわかりました 」
どういうことー？！とうるさいヒョンを放っておいて、テヤンのところ行かなきゃ。絶対、悲しんでるはず。
「 ちょ、俺を置いてそっち行くのー？ 」
冗談混じりにそう聞いてくるヒョンのおでこにデコピンする。
「 当たり前じゃん。好きな人に誤解されたくない 」
「 ……ってえ？！？好きって、好きな人って言った今？！？！ 」
ごめんね、ヒョン。
僕、一緒にいて落ち着かなくても、ずっと緊張してても、どうしてもテヤンがいい。
だってあーやって嫉妬して拗ねてるの、めっちゃ可愛んだもん。
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「 …… 」
洗面所でバシャバシャと何度も何度も顔に冷水をかける。誰でも嫉妬するわけじゃない。誰に対してでも距離が近いインソンヒョンだから、怖い。ましてやダウォニヒョンのことが好きで近付いてるから、いつ取られるか分からないし、いつ俺が愛想つかされるか分からない。
今の俺には胸張って堂々と鑑賞できる余裕が無い。
ダウォニヒョンがインソンヒョンと居る時の方が楽しそうで、それを見るのが心底嫌だ。
ずっと一緒にいたから仕方ないのは分かるけど、それでも、俺だってずっと追いかけてきた。少しでも近付けるように、少しでも振り向いて貰えるように。でも、考えたら、寧ろ奪ったのは俺の方かもしれない。ずっと2人は仲良くて、肩組んで歩いていたのだから。
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作者名：凪緩 | 作成日時：2022年8月21日 8時
