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ドアを開けた瞬間、思いっきり目が合ってしまった。分かりやすく動揺してしまい、落ち着くために取り敢えずドアを閉める。そして再度、ドアを開けた。
「 なんで起きてんだよ 」
「 えっ 」
「 そういう顔しただろー 」
ヒョンから言われた言葉は予想外で＿＿寧ろ起きていて良かったのだが＿＿ただただ目が合ってしまったことに驚いただけなのだ。
ヒョンは思ったより普通そうで、ケロッとしていた。
ほっとしながら、無言でベッドに近付いて横に置いてあった椅子に腰を下ろした。
俯いていた顔をあげて、話そうとしたら彼が先に口を開いた。
「 どしたの、お前が来るなんてめづらしいね 」
「 …ヒョン、最近、体調悪い？ 」
相手の言葉に返答もせず、すごく心配で、その気持ちが先走ってしまった。
彼はうーん、と眉を顰めた。何かを考えたのだろうが、その言葉を飲み込んだかのようにカラッとした笑顔だった。
「 …んーん！大丈夫！僕がいなくて寂しかったってことー？ 」
ニヤニヤと笑う顔に、なんだ、いつものヒョンじゃん、と安堵しながら、俺もいつもの俺でいようと思ってしまった。
「 は！違うし…別にヒョンがいなくても全く困らないよ 」
…言い過ぎた？
冗談には冗談で返す。どーゆーこと！？と突っ込んで欲しかったのだが、彼はだよなー、と予想外の相槌を返してきた。
え、これじゃ、俺が本当にヒョンがいなくていいって思ってるみたいじゃん。
前言撤回しようと言葉を探すが、何を言っても相手を傷付けそうで、言葉が出ない。
「 そんなことを言いに来たわけ？ 」
今まで笑顔だった彼が、落胆したような、何かを諦めたような顔でそう言った。
「 へ、 」
思わず息が漏れるだけで、掠れた声しか出なかった。
やっぱりいつものヒョンじゃない。
絶対なんか隠してることがある。
そう思っても確信がなくて、聞けない。
沈黙が続き、それに耐えられなくなったのか、ヒョンが顔の目の前で手を合わせてごめんっと言ってから、背を向けて話した。
「 ……なんでもない！ちょっと疲れてるから、ほっといてもらってもいい？ 」
俺はこくん、と頷き、椅子から立ち上がり、ドアを開けながら、最後の勇気を振り絞って口を開いた。
「 ………なんかあったら…頼りにならないかもだけど、話してね 」
そう言って、ドアを閉めた。
ドアを背にして、ずるずると崩れ落ちる。
あぁ、ヒョンは何に苦しんでるんだろう。
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作者名：凪緩 | 作成日時：2022年8月21日 8時
