태양 × 다원 『 君が運命 』 ページ11
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童話の世界の中だけだと思っていた。
幼少の頃、母が話したことは全て現実味が無く、夢に浸っているような、そんな感覚だった。
今考えれば、全てが現実だった。
「 この世界にはね、3つの血液型があるのよ 」
母が語った世界の話は、3つの血液型に縛られる、可哀想な人達の話だった。
大概はβとされ、普通に生活出来て何不自由ないらしいが、圧倒的に優秀で王とされるα。貧弱で何も出来ないΩ。この3つに分けられるらしい。
衝撃だったのは、絵本で呼んだコウノトリの話は嘘で、人間は自分達で赤ちゃんを産むのだと言うこと。
今となっては母があれほど熱心に言い聞かせたのは、僕に最悪な人生を生きて欲しくないからだろう。
＿＿＿＿僕が貧弱で、何も出来ない、Ωだから。
アイドルという世界は甘くない。
365日、24時間、何かに追われ、睡眠もろくに取れず、必死に笑顔を作り、歌を歌い、踊りを踊るのだ。
デビュー当時僕は、アイドルの世界にはほとんどαしかいないことを知った。
何を隠そう、メンバーは僕以外全員αだから。
そりゃああれだけの才能を持ち揃えて、皆何かしらのことが抜きん出て出来る…産まれた時から、決まっていたことだけど。
現実を突きつけられ、挫折をするには簡単な材料だった。
着いていけない。
背中を追っても、僕には走るための靴もないし、寧ろ足枷がついているのだから。
そう思って、"標準になれるように”、”βと誤魔化せるように”、ただそれだけを考えて今までこなしてきた。
抑制剤を飲んで、なんとか今日もやり過ごした。
しかし薬の副作用は容易なものではない。
メンバーに言っていないことだから、1人で解決しなければいけないのが1番の難点だった。
気を抜けば怠けてると言われ、本気を出しすぎたらきっとすぐ倒れる。
しかし今日は、今までの中で1番体調が悪かったのだ。
「 っは、っは……やっべー……倒れそ…… 」
ダンス練習の休憩中、一旦ベランダに出て、自然の綺麗な空気を吸い込む。
僕は昔から薬の効かないタイプだった。
2週間に1回病院に行って、検査を受けてはなんの数値が高いだの、低いだの言われて薬を出されるが、次の検査までに標準に戻ったことがない。
20歳になったくらいから徐々に薬が効き始めたと思ったら、医者が強い薬にしたのか、副作用がとんでもないものだった。
医者曰く、小さい頃は副作用に耐えられない子も多くいるから20歳頃から強い薬を与えることが多いみたいだ。
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作者名：凪緩 | 作成日時：2022年8月21日 8時
