拝啓、爆弾魔さん。【名探偵コナン】

No.44 ページ45

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Aと裏理事官との仲なら、公安の情報など別に見せても何の問題もないのだろう。




……まて、流されてるぞ。


彼女の話に納得してしまえばしてしまうほど、それはAの思う壺。


どうにかして断ろうと思考を巡らす俺をぐいぐいと引っ張って、仮眠室へと連れて行くA。


そんなAに生じた疑問が一つ。



「……こんなに力強かったか？」


『役立たずは嫌なんで、鍛えてるんですよ、最近。』


無意識のうちに溢れていた疑問にあっさりと答えが返ってくる。


生憎、俺の右腕を引っ張って前を向くAの表情は窺えなかったが、きっとあの意志の強い紅い瞳で前を見つめているのだろう。



『…休んでください。健康じゃなければ何もできません。お願いです。』


仮眠室へとずるずると引っ張られて辿り着き、真剣なトーンで言われてしまった。


「…わかった、」


ここまで言われてしまってはもう休まないなどと言う選択肢は残されていない。



彼女の優しさを有り難く受け取って、1時間程の仮眠を取らせてもらおう。


仮眠室に入ってベッドに腰掛けた俺を、Aがドアを半分開いて此方を窺う。




『"しっかり"寝てくださいね、零さん。』


「っ！？」



1時間と言う仮眠で済ませようとしていたことがバレていた驚きと、再び紡がれた自らの名前に衝撃を受けた。


驚いて口が開いたままの俺を見て、Aは悪戯が成功した子供の様に無邪気に笑う。



『私が降谷さん、って呼んだとき、すごく寂しそうな顔してましたよ？』


そう言って目を細めて笑うA。



じわじわと顔を襲う熱は、ただの羞恥か、それとも全く別の感情か＿＿＿。




心臓の奥でずくり、と動いたそれに気づきそうになったとき、Aがおやすみなさいと言って出て行った。


「はぁ…」


平常より少し早いテンポを刻む心臓に、これはしばらく寝付けなそうだと思う。



…つくづく末恐ろしい女だ。


Aが敵じゃなくてよかった、と心の底から安堵してベッドに倒れ込んだ。

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