【刀剣乱舞】その審神者、政府の基準なり【ブラック本丸】 (ページ36)

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束の間の── ページ36

Aside

(これでいい、これで全てが丸く収まる)

自室の、自分で材量から選んだこの世に1つしか存在しないオーダーメイドの椅子に腰掛ける。

少し震える手で煙管箱を寄せて、煙管を叩いて灰を落とす。

吸い口から煙を肺いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。

煙管を持つ手が、震えていた。

最期の、一服、かぁ…

感慨深い一瞬に目を軽く伏せた。

長い、本当に永い間生きてきたけれど、
こんなに気が動転しそうなほど緊張したのは
まだ"人間"だった頃以来かもしれない。

自嘲気味に笑う声が、部屋に響いた。

「大丈夫、大丈夫、」

目を開けて言い聞かせるように強く、強く呟く。

これが終わったら、全てが、……終わる。

大丈夫、大丈夫、大丈夫────

「大丈夫、かなぁ」

何回も何回も作戦を練り直した。

何回も何回もシュミレーションした。

だから大丈夫。
そうでも考えなければやっていけない。

ああ、いつからこんなに失うことが怖くなったんだっけ。

少し滲んだ視界を閉じると、瞼の裏に色々な記憶が浮かんできた。

笑っているみんなの顔、

困ったように笑って、

みんなで悩んで、

泣いて、難しい顔をして、また笑って、

大事な大事な、私の宝物。

一欠片も要らないものなんてない、
必要無いものなんてない、

大切な、宝物。

「絶対に、守ってみせる」

あの子達の、笑顔も涙も、奪わせやしない。

絶対に、私が守り通してみせる。

クリアになった視界の目の前に掌をかざし、
ギュッと力強く握った。

「よし。」

握った拳を戻し煙管の火を消すと、ゆっくりと扉を開け廊下へ出る。

さて、最後の決戦だ。