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「…んん…、やは、ば……」


後ろからの眠そうな声。

矢琶羽が振り向いてみると、起きているのか寝ているのか分からないような、夢現の状態のAが微かに目を開けていた。

漆色の睫毛がゆっくりと揺れる。

しかし、Aは直ぐに着物の裾で顔を隠してしまった


「……やはば…、……に…、ないで…」


顔を隠しながらボソボソと言うものだから、何を言っているのかわからない。

普段ならば"聞こえぬわ"と苛立ちを見せているところ。

しかし先程中僧正と話したことを思い出す。

素直に、相手の気持ちによりそう…


「…すまぬが、よく聞こえぬ。A、そちらへ近づいても良いか」

「ッ…う、ん…」


Aは矢琶羽が丁寧に聞いてくれたことに驚きつつも
頷き、そっと顔を隠していた袖を降ろした

きっと随分長い間泣いていたのだろう

その証拠に目は赤く腫れていて、随分と悲しそうな顔だった。

そんな顔をするくらいなら、もうここへ来なければいいのに、というのが矢琶羽の本音だった。

こんな喧嘩、日常茶飯事なのだから、また辛い思いをするのでは、と考えることは容易だろう。

何故未だにAが自分の部屋にいるのか、不思議で仕方がなかった。

矢琶羽はそっと近づき、隣へ座ると目を瞑って耳をAの口元に寄せた。


「…きらいに…ならないで…」

「…嫌いに…?」


なれるのならば遠の昔になっている。

嫌いになれないのだからこうも関係を拗らせているのだ。


「…嫌いになる訳無かろう…」


Aは何も分かっていない。

Aがどれだけ矢琶羽の心を縛りつけているのかを。

また明日→←とめて



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設定タグ:矢琶羽 , 矢印鬼 , 鬼滅の刃   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:aaa | 作成日時:2022年8月31日 10時

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