とめて ページ5
「うっ……ばかッ…わたしの……ばかぁ…」
Aは食べかけの水まんじゅうを残し、矢琶羽の机の上に突っ伏して泣きじゃくっていた。
「やはばなんて、きらいっ…ぅッ、きらい、きらい…!だいっきらい…!!…うぁぁっ…」
心にも無いことを口にしては、勝手に心が傷ついて涙が絶え間なくポロポロと零れた。
零れた涙は、机に水溜まりを作っていく。
素直になれ。そんなの、そんなのは、自分がよくわかっている。
拗らせた性格のせいで、いくつもの時間を喧嘩で無駄にしてきた
本当はわかっている
矢琶羽は何も悪くない
悪いのは、全てわたし
だって、止めて欲しかった
結婚するな、ここにずっといればいい、て…
言って欲しかった…
でも、言ってくれなかった
自分でも、我儘だ、てわかってる
でも……好きな人意外と結婚するなんて…
考えたくなくて
好きな人に、止めて欲しかったのに…
「う、うぅぅ…!!」
先程の出来事を思い出したら、益々涙が止めどなく溢れた
涙を止める方法を知らないAは、泣き続けながらただただ矢琶羽という薬を待ち続けた
昔からそうだ。泣いている時にはいつも矢琶羽がそばにいてくれた。
優しい言葉をかけてくれていた
そんな彼に次第に惹かれていき
許嫁の話がある度にこの部屋へ勝手に侵入しては、止めてくれるのを待っていた。
そんな彼に、そっぽを向かれたのだ
平常でいられるわけが無い
「ひっく……う、ぅ……」
時期に泣き疲れたAは、ゆっくりと眠りにつく
時折ぐすり、と鼻を鳴らしながら。
______________
「…これは…」
1時間ほどして戻ってきた矢琶羽が自室で目にしたのは、散乱した紙類と、その上に寝転がって眠るA。
「チッ……」
矢琶羽は舌打ちを鳴らすと手拭いを手に取り、そそくさと机や床の掃除を始める。
机を拭き、食べかけの水まんじゅうを処分し、Aの下敷きになっている紙類以外を全て片付けた
静かに溜息をつき、ひと休みしようとしていたところ、ひらりと1枚の紙が足元に落ちてきた
拾ってみるとそれは今月の暦だ
次に目に入ったのは、今日から1週間後の日付
その日、街では大きな祭りがある
あの世へ旅立った者を祀り、再会を祝うこの街の祭りだ。
「…Aでも誘ってやろうか…」
矢琶羽はぽつりと呟くと、中僧正の言葉を思い出す
素直に、か…。
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作者名:aaa | 作成日時:2022年8月31日 10時