彼らの告白 ページ16
「ふふ、今年はね、じゃーん。水まんじゅう持ってきたの!」
「またか…いい加減食べ飽きたぞ…」
「…これ…好きなんだけど、あの日のこと、思い出しちゃう」
Aは恥ずかしそうに笑った
「…あのね、矢琶羽…。私、やっと結婚するの」
「………。」
「…金持ちの娘としてじゃなくて、私自身を見てくれる人を、見つけたんだ…」
「…そうか」
「…喜んで、くれるかな…?」
「うむ」
「…そうだったら、嬉しいな…」
嬉しい、というAは、どこか悲しげに笑った
「…今日の日になると、色々と思い出しちゃう。
…ねぇ、矢琶羽…。あの時…私のことを想ってあんなこと言ったんだよね」
「……」
「あの後、考え直したの
私が逆の立場なら、いかないで、て止めてたと思う。だって私、ワガママだから…!」
「知っておる」
「…でも、矢琶羽は私と違って優しいから…
ああすれば、私が矢琶羽を嫌いになると、思ったんだよね…
私の気持ち…伝わってたかな…」
「………」
「そりゃ…聞いても何も言ってくれないよね…。
私ね、まだ…矢琶羽が好きだよ…」
微笑むAを、矢琶羽は無言で見つめる。
「結婚はする。それは、もう決めたこと
でも、私にとっての初恋は…貴方だけ…矢琶羽だけだったの…」
「…うむ」
「ねぇ…なんで…?」
Aの目から、大粒の涙が溢れた
「なんで、こうなっちゃったの…」
「……A…」
「うッ…っ、」
Aはまた、涙を流した
毎年、毎年この場所で。
「A……、もう来なくてもよい…」
「なんでっ、どうして…ッ…」
「…お前の泣いている姿を、見たくは無い」
「どうしてっ……」
「……A、儂は、お前を…」
「会いに行く、て言ったのにッ……」
「…愛しておる…」
「なんで、1人で死んじゃうのよ…ッ…」
「……」
「ばかぁっ…やはばの、ばかぁ…!」
_______
_数年前_
引っ越したあと、Aは、矢琶羽が居なくなったことにより、味気のない日々を過ごしていた。
会いに行きたい
でも、きっと…彼は私のことが嫌いなのだろう
会いに行くとは言ったものの、あそこからこの場所までは距離がある
その距離が…Aを複雑な感情にさせる
遠いから、それを理由にして行かなくても済む?
遠いから、それも相まって会いたくなる
そんな、対象的な気持ちに板挟みにされ、気づけば、数ヶ月が経過していた
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作者名:aaa | 作成日時:2022年8月31日 10時