遠くへ行って、しまえばいい ページ12
「…引っ越す…?」
「ごめん、わたし、言えなくてッ…
だってっ、だって…やはばと、離れるなんてッ……ッ」
Aの押し殺していた感情は、爆発
絶叫にも等しい泣き声を上げ、号哭する。
大粒の涙がぽろぽろと溢れ、その声さえも、花火に掻き消されていった
「………」
思いがけもしなかった言葉に、矢琶羽も目を見開く。
全ての音が、遠くにある様な感覚に陥った。
何も、受け付けたくないと体が言っているようだ。
"お前が折れてやれ…でないと…"
"遠くへ行ってしまうよ…"
いつか言われた、中僧正の言葉が、ふと脳裏に横切る。
好きだと伝えていれば、この状態を防げていたとでも言うのか
愛おしいと、慈しみたいと、そんな言葉を言っていれば
Aは、いつまでも傍に居てくれたというのか
否、そんなものは考えても仕方がない
過去は変えられないのだから。
だから、自分が
折れてやればいい
矢琶羽は静かに息を深く吸うと、Aの頬を離し、ゆっくり椅子から立ち上がる。
「そうか、良かったではないか」
そしてまた、口にしてはいけないことを、口にする。
「…これでようやく、儂も一息つける」
お前が、こころよく、この場所を離れられるように。
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作者名:aaa | 作成日時:2022年8月31日 10時