9話 少しずつ、確実に〜買い出しデート（仮）4〜 ページ10
少女の問いかけに対して、先に口を開いたのはオットーだった。
「い、いえいえ！確かに関係は良好ですが、あくまで職場での関係ですしっ！……それに、今の僕には、女性を幸せにすることは、できませんよ、きっと」
前半部分は八割が照れ隠しだが、後半は本心。
オットーは過去、マローネを同じ理由で諦め、自身の弟に彼女を託した。
そんな込み入った話を、出会って数日のAが知る由もない。
だが、オットーの妙に寂しそうな声音と表情は、その言葉が決して冗談の類ではないことを物語っていた。
それ故、Aも、本心であるのだと察する。
(私はオットーといるだけで、結構幸せなのに……)
Aは、もっと自分に自信を持ってほしいものだと思いながら、もう一度彼の表情を盗み見る。
するとやはりオットーは、全てを諦めてしまったような、そんな表情をしていた。
「そ、そうなの……。ごめんなさい」
オットーの沈んだ面持ちに気圧されたのか、少女は自分の軽はずみな発言を謝罪した。
当然、オットーもAも全く怒ってなどいないが。
「ぜ、全然大丈夫。ちょっとびっくりしちゃっただけ。謝らなくていいよ」
「そうですよ。僕も、少し驚いてしまっただけです。僕たちが仲が良さそうに見えたなら、何よりですよ」
(Aさん、優しい、ですね……)
(オットー……、やさしい)
◇◇◇
少女に手作りクッキーをプレゼントして、二人はようやく、帰路についた。
「……ねえ、オットー」
Aは、おそるおそるといった様子で沈黙を破った。
「どうしました？」
「……オットーは、人を幸せにできる。優しいひとだから」
やけに真面目な雰囲気のAは、オットーの目には、いつもより大人びて映った。
「Aさんが言うと、そんな気がしてきますねえ。不思議です」
ほほえみながら答えるオットー。
「……あ、オットー。荷物持ちなのに、全然持ってない。ハイ。これ持って。あとこれも」
「急に何なんですか！？僕を励まそうとしてくれていたのでは！？」
Aの下手くそな照れ隠しに気付かないオットーは、いつもの調子でツッコミを入れる。
「仕事はちゃんとして。あと、オットーは、もっと自分に自信を持つべき。……せっかくｶｯｺｲｲんだから」
「……せっかく、なんて言いました？」
どうやら、本当に聞こえなかったらしい。
「っ！！やっぱなんでもない！」
少しずつ、確実に、二人の心は近づいている。
10話 内政官は、すやすやと（11話の導入）→←8話 小さな少女の爆弾発言〜買い出しデート（仮）3〜
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あくる(プロフ) - そんな事を言って頂けて、感謝感激です！ またちまちまと番外編を書こうと思っていますので、よろしくお願いします！ (11月1日 18時) (
レス) @page28 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
作者くん！(プロフ) - 神ですね、この作品 (11月1日 17時) (レス) @page28 id: 36c939bd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あくる | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/03240906ak1/
作成日時：2023年7月2日 1時
