蛇足 Trick but Treat！ ２ ページ28
これにオットーが怖気づくことなく言い返せるのは、二人の間に確かな信頼関係があるからなのだろう。
『恋人』というワードに詰まってしまうのは、彼の性格上仕方がないのかもしれない。
「ふふ、“トリックバットトリート”ってやつだよ」
「“トリックオアトリート”じゃなくてですか……？」
聞き慣れない言葉に首をかしげるオットーに、Aは説明してあげる。
「トリックオアトリートは、『お菓子くれなきゃいたずらするぞ』でしょ？」
「はい」
そしてAはいたずらっ子のように、否、彼女はオットーに対してはいたずらばかりしている。
Aはいたずらっ子らしくニッ、と笑い、続けた。
「トリックバットトリートは、『お菓子くれてもいたずらするぞ』だよ。だからそれにならって、オットーのお菓子を甘くするいたずらしてみた」
「それは理不尽すぎませんか！？」
数えるのも面倒になるほど響くオットーの悲鳴を聞き流しながら、Aは憐れむような目をオットーに向ける。
「そういうものだから仕方ない。ドンマイ」
「やったのはAさんですよねぇ！？」
文句を言いながらも結局きちんと全部食べてくれるオットー。
時々彼が見せるこういうところが、Aの心臓を跳ねさせるのだろう。
「……オットー、これも、あげる」
そう言ってAがおずおずと差し出したのは、大きめの袋に詰められたスナック菓子だ。
「あ、ありがとうございます。……これ、何ていうお菓子なんですか？」
オットーが知らないのも当然。
何せこれは、Aがスバルに教わった、地球のお菓子だからだ。
「“ぽてとちっぷす”って言うらしい。スバル様に聞いた。薄く切ったじゃがいもを油で揚げるんだよ」
Aは『それに塩をかけた』と付け足す。
「……もしかして、僕のためにわざわざ？」
「ち、ちがっ。つ、ついでだもん」
顔を真っ赤にしながら言うAを愛おしげに見つめながら、オットーは少し意地悪な質問をしてみる。
「本当ですか？」
オットーの端正な顔に見つめられたAは、羞恥で更に顔を真っ赤に染め上げた。
「……嘘。オットーのために作った」
普段は照れ隠しでツンツンしているだけで、Aもやっぱりオットーのことが大好きなのだ。
典型的なツンデレである。
そして、オットーもまた、そんな彼女を愛していた。
どちらからともなく始まった口づけは、屋敷の大多数の人間に見られていたと、後に発覚するのであった。
終わり
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あくる(プロフ) - そんな事を言って頂けて、感謝感激です！ またちまちまと番外編を書こうと思っていますので、よろしくお願いします！ (11月1日 18時) (
レス) @page28 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
作者くん！(プロフ) - 神ですね、この作品 (11月1日 17時) (レス) @page28 id: 36c939bd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あくる | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/03240906ak1/
作成日時：2023年7月2日 1時
