22話 特別なバレンタインデー ページ23
Aが目覚めてから一ヶ月が経ち、彼女もすっかり元気になった。
オットーは以前と何も変わらない毎日が戻ってきたことに安堵しながらも、どこか寂しさを覚えている。
原因は明白だ。
薄闇に包まれた森の中で、自我すらもあやふやになっているAに彼が告げた想い。
この出来事は、Aの中ではなかったことになっても、オットーの中には残り続ける。
そんな当然のことにも気付けないほど、Aが目覚めた時、オットーは混乱していた。
だからといって、彼は自分の想いをもう一度伝えなかったことを後悔している訳では無い。
だが、消化不良の気持ちがくすぶる気持ち悪さは拭えないものだ。
「はあ、僕にもっと勇気があれは良いんですけどね……」
長期戦になるかと思われたこの両片想いだが、試合はあっさり過ぎるほど早く終わることになる。
何故ならば……
「オットー、今日何の日か知ってる？」
考え事をしているオットーの背後に上手く回り、Aは彼の肩をぽんっと叩く。
そして投げかけた質問は、女子の多用する質問形式だ。
最近はAのこともあり、日付など全く気にしていなかったオットーは、一生懸命考えたが、ついに何も思いつかない。
「何の日なんですか？」
「……バレンタインデー」
「へー」
Aは少し恥ずかしそうにそのイベントの名を口にするが、オットーはそれを全く気にしない。
彼にとってバレンタインデーとは、自分には全く縁の無いものという認識しか無いからだ。
それ故、”バレンタインデー”という単語に全く興味を示さない。
「興味無いの？」
「僕には関係ない行事です」
オットーは苦笑して、チョコ貰ったこと無いですし、と付け足す。
「へー、貰ったこと無いんだー……」
「煽ってません！？」
完全にAの言葉の意味を誤解しているオットーだが、彼女はそれをわざわざ訂正することはしない。
そこまで頭が回らなかった、と言う方が正確だろうか。
「……じゃあ、オットーの人生最初のチョコは、わ、わたしがあげるっ」
Aが押し付けるように渡したのは、試行錯誤を繰り返して完成したチョコレートケーキだ。
甘いものが苦手なオットーの為に、カカオ100％のチョコを使用している。
「義理？」
「……本命っ！」
気合の入ったラッピングやAの様子からして義理な訳がない。
そのはずなのにわざわざ確認するオットーには、流石のAも驚いてしまう。
「オットー、好きだよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あくる(プロフ) - そんな事を言って頂けて、感謝感激です！ またちまちまと番外編を書こうと思っていますので、よろしくお願いします！ (11月1日 18時) (
レス) @page28 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
作者くん！(プロフ) - 神ですね、この作品 (11月1日 17時) (レス) @page28 id: 36c939bd27 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あくる | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/03240906ak1/
作成日時：2023年7月2日 1時
