21話 なかったことになるだけ ページ22
こうして、ロズワール邸メイド行方不明事件は解決したように見えた。
だが、そう簡単にはいかないらしい。
取り込んだ魔女因子の影響か、Aが一向に目を覚まさないのだ。
助けようにも前例がなく、既に1ヶ月が経過している。
「……オットー、今日も寝てねえのかよ」
「……」
スバルはここ1ヶ月、ほとんど睡眠を取っていないオットーを見かねて声をかけるが、返ってきたのは沈黙のみ。
「……飯置いとくから。ちゃんと食えよ」
相変わらず返事はないが、きちんと食事は取っているようで、毎日ドアの前には空になった皿が置かれている。
オットーはAの寝かされているベッドにおもむろに歩み寄り、彼女の青白い頬をそっと撫でた。
ふにふにした頬の触り心地が癖になり、思わずつついたり引っ張ったりしてしまう。
彼は”これで目覚めてくれればいいのに”なんて思いながら、しばらく触り続けた。
オットーが不意に視線を上げると、Aとパチッと目が合う。
彼は寝不足だから幻覚が見えたのかと思い、ごしごしと袖で目を擦ってからもう一度見た。
「……おはよー」
「は？」
今までずっと眠り続けていたAが、何の前触れもなく、急に目を覚ましたのだ。
彼が驚くのも無理はない。
オットーは、気がつけばAを力強く抱きしめていた。
突然の行動に、Aは目を白黒させる。
「お、オットー！？急に何！？」
「……良かった」
「何が？」
その問いかけの意味を理解した途端、オットーから急速に血の気が引いた。
「……まさか、覚えていないんですか？」
「だから何のこと？」
少し苛立ちを見せ始めるAを見て、オットーは確信した。
彼女の魔女教に関わったすべての記憶が消えていると。
きっとAはもう覚えていない。
――オットーの一世一代の告白も。
(覚えていないなら、今もう一度言えば良いじゃないですか)
彼はそう思い、言葉を発しかけて、やめた。
あの出来事が、なかったことになっただけ。
同じ態度で関われば、前と何も変わらない毎日を過ごせる。
そう思ったからだ。
それに、今言ってもAに迷惑をかけるかもしれないし、もう少しお互いを知ってから改めて伝えるべきだと思った。
だからオットーは一言、「何でもありませんよ」とだけ言って、部屋を後にした。
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あくる(プロフ) - そんな事を言って頂けて、感謝感激です！ またちまちまと番外編を書こうと思っていますので、よろしくお願いします！ (11月1日 18時) (
レス) @page28 id: 64a42a1344 (このIDを非表示/違反報告)
作者くん！(プロフ) - 神ですね、この作品 (11月1日 17時) (レス) @page28 id: 36c939bd27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あくる | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/03240906ak1/
作成日時：2023年7月2日 1時
