星空の王子さま【N.Kazunari】 (ページ10)

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彦星を待つ織姫ページ10

もう何年前だろうか、私が大学生の頃だから10年は前のこと

当時付き合っていた彼に言われた言葉

「そんなバカみたいな話、あるわけないだろ！？それにお前、重いんだよ！」

彼は私と違う女の人とも付き合い始めてた。それを知った上で

きっと私のところに戻ってくる。

彼を信じてるもん。

なんて健気に彼のことを思っていた私の心は呆気なく壊された

小さい頃に親に聞かされたお話『織姫と彦星』

『織姫様と彦星様は１年に１度だけ、七夕の日にしか会えないのよ』

『そんなの可哀想だよ』

『それでも、少し辛くたって二人は永遠に結ばれているのよ？だから織姫様にとって彦星様は運命の人だったのよ』

『そーかなぁ』

その時の小さかった私にはよくわからなかったけど、大きくなってからもこの事だけは忘れてない

そんな話を当時の彼に星空を眺めながらした

あ「あなたが彦星様なのかな」

なんてちょっと呟いたら、怒鳴り散らされて最後に言われたのがあの言葉

それでも七夕はちょっと特別な感じがして

もしかしたら私にも彦星様が来たりして

なんて柄にもないことを思ってしまう

残念なことに都会の空は星なんて全然見えない

天の川もアルタイルもベガもみつからない

けれどある日、たまたま友達に誘われて行った高層ホテルのレストランで心を射たれた

そこは壁一面が窓ガラスで夜の都会を一望できる

その景色はまるでキラキラと暗闇に無数に光輝く星のようで、あたかも自分が天の川にいるみたいに感じた

友達は「Aはこういう所好きだろうなと思って！」とその彼と別れたことを慰めてくれようとしてたみたい

それからは毎年、七夕の日にそのお店の窓近くの席を予約してそこで一人で食事をしてる

最初は、絶対いい人と出会って後悔させてやる！っていう元カレへの当て付けだった

でも、今ではそんな気持ちは微塵もなくなってむしろ願掛けみたいな気持ちで通っている

あ「今年は天気が良さそうじゃないからなぁ、彦星は現れないかもしれません笑」

そうマスターに言うとマスターも一緒に笑ってくれた