星空の王子さま【N.Kazunari】 (ページ21)

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魔法使いページ21

その日は呆気なくやってくる

ルンルンで買ったワンピースを着ても

少しでも綺麗になるようにのせるメイクも

ホテルのレストランまで歩く道も

いままでとは違って色がない

気分も上がらない

せっかく１年に１度やってくる日なのに

原因はわかってる

ただ自分が辛いから勝手に嘘ついて

二宮さんを困らせて

私はいったいなにをしてるんだろう

楽しみだった二宮さんとのやりとりも無くなった

自分で招いた今の状況をどうすることもできない

二宮さんに会いたいよ

彦星はいるよって、また優しく笑ってほしい

できるならそれを隣でずっと見ていたい

こんなに自分から人を想ったことは無いかもしれない

ガラス張りのエレベーターが私に見せている景色はきっと素晴らしいものなんだろうけど

その煌めきと華やかさが逆に私の寂しさを強くさせる

あ「予約していた山口です」

『お待ちしておりました山口様、ご案内いたします』

案内してくださるのは毎年同じ、品があってしゃんとしている落ち着いた雰囲気の男性

『こちらになります』

ドアを開けて中へ

『いつもとは違う場所でよろしかったんですか？』

あ「え、」

『いえ、毎年同じ日に同じお席をご予約されていましたので、』

ふいに泣きそうになった

1年にたった1日しか来ないのに

私のことを見つけてくれてありがとう

彦星さまには会えなかったけど、ずっと待っていた事が報われたみたいで凄く嬉しい

涙と一緒に心に留めた気持ちのかわりに

あ「ありがとうございます、でも今日は貸しきりでたまには贅沢をと思いまして」

『作用でございますか、出すぎたことを申しました。夜景、存分に見ていってください』

この方は、私が夜景を見に来ていることも気付いていたのね

あの人ほんとは魔法使いなんじゃないかな

そんなことを思いながら、予約していたコース料理が運ばれてきて

いわれた通りに夜景を見ていたら

また二宮さんのことを思い出してしまった

二宮さんには相応しい女性がいて

きっと私にも私に見合う男性がいて

そうやって世界はできてるんだよ

いくら今が悲しくたって

待ってたら会えるもんね

七夕のお話みたいに