. ページ43
.
ふと目を開けると彼の温もりに包まれていた。ふわふわの布団が温かくて気持ちいい。
瞼が何だかとても重い。あれから泣き疲れて寝てしまったのか。
彼は昨日ずっと私の背中をさすり、優しく抱き締めてくれた。その彼の愛情の深さにまた泣いて、彼が愛おしくて。
まだ日は昇ってないのだろう。
辺りは薄暗く、やけに静かだ。
布団の中で彼の顔を眺めてみる。
すぅ、すぅと寝息を立てているいつもより幼い顔。
愛くるしくて、切なくて、ぎゅうと抱きついて彼の胸に顔を埋める。
彼の言葉にあんなに重みを感じて心が震えると思わなくて、今までこの言葉を軽く考え過ぎていたのかもしれない。生きてきて一度も使ったことのないこの言葉。
彼の言葉が頭の中でこだまする。
「………愛してる」
虫の息よりも小さな声で呟いてみる。
じわりと心の中から何かが溢れた。
すると突然、抱き締められていた腕にぐっと力が入り布団に押し付けられた。間髪入れずに口を塞がれる。突然の出来事に心臓がドクン、と強く音を立てた。彼の熱い熱に溶かされて、一瞬にして気持ちを持っていかれる。
ふっと唇が離されて、暗闇の中で彼の目が私を捉えた。
…………。
見つめ合ったまま、沈黙が流れる。
彼の優しい手が頬を撫でた。
そのまま顎を掴まれもう一度唇が重ねられる。
優しい…溶けそう…
彼は何度も角度を変えて私に甘い口付けを落とした。
そしてふわりと優しく抱き締められる。
大好き……
ぎゅっと私も彼を抱き締める。
どれくらいそうしていただろう。
しばらくすると、彼が耳元でぼそっと囁いた。
「……声、我慢できる？」
彼の言葉に目をぱちくりさせてしまった。
意味を理解して、喉の奥がごくりと鳴る。
そんな私を、彼は優しく微笑んで、もう一度、優しい口付けを落とす。
朝日が昇るにはまだ早い。
薄暗い夜明け前、彼から、溶けるほど甘い愛情を降り注がれたのは、ここだけのお話。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にくまん(プロフ) - かなこさん» 苦しくさせてしまいすみません。私も苦しかったです← とりあえずイチャイチャ出来て顔が緩みました…ぜひ更新お待ちくださいませ！ (11月23日 17時) (
レス) id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - 途中苦しくてどうにかなりそうでしたが、グランピングとても幸せそうなお二人を見れて幸せでした🫶🏻続編を予定されているのが大変嬉しいです。 (11月22日 21時) (レス) @page48 id: cd18282d70 (このIDを非表示/違反報告)
にくまん(プロフ) - eriiiさん» こちらこそ…！コメントくださるととてもほっこりします。ありがとうございます…！ (11月16日 18時) (レス) id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - 堪らないです🤦🏻♀️いつも素敵な作品をありがとうございます！！ (11月16日 6時) (レス) @page36 id: 8d69bf7036 (このIDを非表示/違反報告)
にくまん(プロフ) - ゆうさん» 初めまして。ご覧いただき、そして嬉しいお言葉、ありがとうございます。一気に…というのがとても嬉しい所存でございます。これからもぜひお楽しみくださいませ。 (11月12日 22時) (レス) id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にくまん | 作成日時：2023年11月5日 21時
