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先日。会う予定だった彼女の体調が悪くなり、飲み物やちょっとした食べ物を家まで渡しに行ったとき。
彼女になぜそんなに優しくするのかと問われて「好きだから。」と伝えたけれど、多分彼女には届いていなかった。あれから何度か会ったけれど、そのことについて何も触れてこなかった。
もうすでに二回は好きだということを示しているのに、全く伝わらないことに少しだけ焦りを感じてはいた。それでいてあのメッセージ。
少し苛つく。
賑やかな駅前を歩くと、居酒屋から出てきた若い人たちにぶつかりそうになった。酔っ払って肩を抱いたり抱かれたり、よく見る光景だけれど、それを見て胸がざわつく。
澄んだ空気は足取りを軽くさせていたはずなのに、ヒヤリとした夜風が通り抜け、波風が立つような気配に呑まれた。
カランカラン、といつもの音を鳴らして扉を開けると、奥のカウンターで彼女が座っているのを確認できた。その隣に座る男。彼女の肩を抱いて、今にもキスをしそうな勢い。
ツカツカと歩いて彼女の肩に回された腕を持ち上げた。
理性を飛ばして起こした行動に、心の中で、やべ。と呟いたが、それを気にせずなるべく優しくその腕を下におろした。
「すみません、この子、何か失礼をしましたか?」
「……いや、全然……」
男は急な出来事に驚いたのか、少し怯んだ様子を見せた。それを見て口元だけニコリと笑ってみせる。何故いるの?という顔でこちらを見つめる彼女を視界の隅に確認したが、目を合わせることはしなかった。
「そうですか。彼女、かなり酔っ払ってるみたいなのでご迷惑をおかけしたかと。何もないなら良かったです。じゃあ、僕と予定があるので、これで失礼しますね。」
一気に捲し立て、彼女を指差しりょうくんに「お会計。」と一言放った。
「ハイ!」と彼はすぐに会計札を出してくれた。きっと彼女の様子を見て心配してくれていたのだろう。少しだけホッとした表情を見せたりょうくんに、心の中で感謝しつつ、彼女の手首を掴んで店を出た。
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にくまん(プロフ) - eriiiさん» 楽しみにしてくださっててとても嬉しいです。しばらく彼視点を更新していきますのでごゆるりとお楽しみくださいませ。 (11月25日 13時) (レス) @page25 id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - この展開!!本編でめちゃくちゃ気になってました!彼視点楽しみです🥰 (11月24日 19時) (レス) @page23 id: 8d69bf7036 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にくまん | 作成日時:2023年11月2日 20時