. ページ25
.
事故直後は興奮状態に陥ることが多いらしく、身体の痛みを感じないこともあり、数日は体調の変化などに気をつけてくださいね、と言われ帰れることになった。
痛む足を引き摺りながら病院のロビーに出る。そこでようやく彼に電話をかけた。
「Aちゃん！」
「ごめんなさい…！」
「どうした？」
「あの、車とぶつかって、今病院で」
ことの経緯を説明すると、病院まで迎えにいくと言われて電話が切れた。
ロビーの柔らかいソファに腰掛ける。
脚がジンジンする。痛い。でも軽傷で済んでよかった。
これでもっとすごいことになっていたら…
考えるだけで身震いしたため、考えることはやめた。
これ、スカートにタイツじゃなかったらなぁ。ジーパンだったら脚はあんまり傷にならなかったかも。顔も、腕も痛いなぁ。傷、痕にならないかな……
「Aちゃん…」
後ろから顔を覗かれる。ふっと見上げると彼がいた。彼にしては珍しく、顔が歪んで、彼の目には……。
「江口さん…。すみません、ずっと待たせてしまって」
「…………」
彼は私を見て何も言わない。思ったよりも包帯がぐるぐる巻きでびっくりしているのだろうか。顔まで傷付けて、よほど、痛々しく見えたのだろうか。
彼の目には、涙が滲んでいた。
ああ…どうしよう…
こんな泣きそうな彼は見たことがない。
心配させて、こんな顔をさせてしまうなんて。
思えば彼は私に幸せをくれてたけど、私は彼に幸せをあげられてただろうか。
自分の気持ちを大事にしなねとマスターに言われたけど。
彼の気持ちを考えたことはあっただろうか。
泣くな。
散々自分の気持ちも伝えられずに、受け入れるだけ受け入れて。
彼の仕事上迷惑がかかるかもしれないのに。
今までも、これからも。
泣くな。
たかが今日会う約束をしただけで、こんなにも迷惑をかけている。
これからも迷惑をかける。今よりも、今以上に。
苦しい。
こんな顔をさせてしまうなんて。
私は、彼を、傷つけたかもしれない。
苦しい。
傷付けるかもしれない。これからも。
苦しい。
「江口さん…」
この人のこんな顔は見たくない。
「私たち、もう会うのやめましょう…」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プシラブ(プロフ) - にくまんさん» すみません！出来ました…！ご丁寧にありがとうございます…🙇♀️ (11月1日 2時) (
レス) id: 1211b73cd8 (このIDを非表示/違反報告)
にくまん(プロフ) - プシラブさん» コメントありがとうございます。secretですがR18設定をしているので、プシラブさんご自身がR18コンテンツフィルタをNG設定にされているかもしれません。マイページ→設定より下部付近に18コンテンツ設定がありますのでご確認くださいませ⭐︎ (11月1日 1時) (レス) id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
プシラブ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます…！続編楽しみに待ってます…！！あとすみません…。secretが見当たらず…。まだ公開されていないというだけでしょうか…。もしそうでしたら本当に急かしている様に感じてしまうかもしれませんが、決してそういったことでないので…。 (11月1日 0時) (レス) @page43 id: 1211b73cd8 (このIDを非表示/違反報告)
にくまん(プロフ) - かなこさん» ありがとうございます。嬉しいお言葉にぶるぶる震えております。近いうちに更新予定ですのでお楽しみに。 (10月31日 20時) (レス) @page45 id: 07d191a8ef (このIDを非表示/違反報告)
かなこ(プロフ) - サイドストーリーも続編も楽しみに待ってます🥰 (10月30日 20時) (レス) @page45 id: cd18282d70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にくまん | 作成日時：2023年10月23日 0時
