出会いは居酒屋にあり。【Fischer's】【短編】 (ページ4)

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手慣れてる君 Customer:Silkroad ページ4

『さっきからやめろって言ってるのにしつこいのはあんたらじゃないんスかね？』

「は、」

酔っ払いが言葉を返すよりも先に、そいつの体は宙を舞った。

『これでも懲りないなら相手しますけど』

『…あぁ、そっちのお客さんも』

さっきまで周りの言葉をまったく受け付けていなかった酔っ払い共の顔は青ざめていた。

「A先輩お疲れ様ッス！」

その後、その酔っ払い共は帰り少し店内の掃除が行われたあと、店はいつも通りへ戻った。
あの後輩店員はAに笑顔で話しかけていた。

『絹張さんお待たせ、馬刺しでーす』

『すいません遅くなっちゃって』

Aは申し訳なさそうに馬刺しを机に置き、サービスで量多めにしといたんで、と言った。
正直俺にとって今馬刺しなんてどうでもいい。

「さっきの大丈夫かよ？」

少なくともあの酔っ払いはAに殴りかかったのだ。受け止めたとしても俺は心配でしかなかった。

『あー、大丈夫ですよ？本当に、結構慣れてるんで』

「Aちゃーん！」

『はーい！今行きまーす！
…すいません、それじゃ、』

他のお客さんに呼ばれて、再び1人になる俺。

「絹張さんっ」

「…お前か」

「A先輩じゃなくて残念スね！」

馬刺しをつまみ始めた俺に話しかけたのはさっきの後輩店員。

「A先輩、本当に喧嘩慣れしてるんスよ、心配するのは分かるんですけど！」

「…お前声でけぇよ」

「あ、すいません！！」

後輩くんの話によれば、居酒屋で働いてる歴も長いし、ちょっと前までは多少のやんちゃをしていたらしい。

Aが危ない目にあったのは想定外だったけどまたAの事が知れたようで俺は少し嬉しかった。

程よい時間になり、帰ろうと思った。

『絹張さんお勘定ですかー？』

「おう、」

-

『はい、お釣りとレシート、』

そう言って手渡された俺の手の上には
レシートと小銭、一枚のメモ？

不思議に思って広げてみるとなにやら番号が書かれている。
…連絡先？…………誰の

Aの？

『私もそんな鈍感じゃないんですよ？』

そうやってまた俺の好きな笑顔でAはまた笑ったんだ。

-

(お前、絶対手慣れてるだろ)

(まさか)

(このやり口は絶対そうだ)

(そんなじゃないですって)

手慣れてる君も嫌いじゃないけど。