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登坂さん。
会いたい……登坂さんに会って何がしたいって訳じゃない。
私の傍に登坂さんがいたら危ない……。
でも、傍にいてほしい。
私、登坂さんの事……なんて呼んでたの?
教えて⁉誰でもいいから……。
記憶が戻るまで此所に居たい。
私が誰なのか?私を必要としてくれてる人がいたのか……それだけでも教えてほしい。
『 はぁぁぁぁ〜。今日は誰も来てくれないか……。』
窓の外を見ながら深いため息が病室に広がる。
ため息をすると同時にドアをノックする音。
トントン。
『 はい。どうぞ 』
伊藤さんじゃありませんように……。
「 Aちゃん久しぶり元気だった⁉ 」
『 登坂さん。 』
「 ごめん。忙しすぎて来れなかった。 」
分かってます。ツアー中ですもんね。
久しぶりに見る登坂さんは少しだけ痩せてみえた。
『 あの登坂さん。私、記憶が無くなる前に付き合ってた男性(ひと)いましたか? 』
「 えっ⁉…… 」
登坂さんから聞けば何か思いだせるかも。
伊藤さんは私の婚約者だって言ってた。
でも、違うような気がするの。
今市さんは「 臣の事が好きだったんだよ」って……。
忙しいのに来てくれた登坂さんに聞くのもなぁ〜って思ったけど……。
記憶がないまま1ヶ月が経って正直焦っていた。
このままでもいいやって思ったりもした。
黙ってた登坂さんが重い口を開いた。
「 いたよ。 」
『 いたんですね。 』
「 彼の事、悪くは言いたくないけど……。彼が俺を鈍器で殴ろうとした時……Aちゃんが俺を庇った。その後、記憶が無くなって。自分の事、俺の事、彼の事を全部忘れてる。 」
『 ………ッ………。 』
あっ、頭が殴られたように痛い。
何かを思いだそうとすると鈍器で殴られたような感覚がある。
目の前にいる登坂さん……私……名前で呼んでたかもしれない⁉
『 臣くん……⁉ 』
「 Aちゃん⁉ 」
驚いてる臣くんの顔見て記憶が少しずつ戻って来てるのを再確認できた。
「 ……… 」
『 …………… 』
無言が続いて……臣くんと目があって……私は、臣くんに抱きしめられた。
懐かしい香り。
甘くて優しい香り。
臣くん。ただいま。
今は貴方だけを感じてたい。貴方だけを……。
「 好きだよ。俺と付き合って‼ 」
臣くんからの告白に私は静かに頷いた。
でも、そんなに簡単にはいかないのがこれからだって事を二人とも思ってなかったんだ。
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作者名:結那 | 作成日時:2018年9月19日 0時