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肆拾捌頁─冥闇ノ引キ渡シ─ ページ10

No Side



「あと十分か」




大型トラックの荷台に運転手の声が静かに届く。

その車はガタガタと舗装されていない人気(ひとけ)のない道を進んでいた。


同乗者の数は四人。

皆可憐なドレスを身に纏っている。

しかしその姿にそぐわない目隠しと手枷。

そのたった二点の違和感がこの場の静けさを納得させた。

不安からか、横に並んで座る葵色のドレスと深緑色のドレスの少女が互いの間で小さな手を繋いでいる。

僅かに震えるそれは恐怖故だろうか。

他の二人も含めて会話は一切無く、ただエンジン音とタイヤの地面と擦れ合う音のみが寂しく響いていた。


十分が経った頃、運転手の言葉通りトラックは停車した。

荷台の扉が耳障りな音を立てて開く。




「要望通り四人連れてきた」

「流石だな。偶にはサービスで一人増やしてくれても善いんだぜ?」

「莫迦を云うな。無駄な危険(リスク)を自分から背負いに行く奴が居るか」




誘拐屋の男は茶封筒を受け取り、代わりに鍵束をスーツを着た男に手渡す。

それは少女たちの手枷の鍵であり、男は闇の競売(オークション)に品物を提供する出品者であった。




「ほぉ中々佳いじゃねぇか。これなら今回も直ぐに買い手がつきそうだ。おいお前等、怪我したくなきゃ大人しくしろよ」




警告する低い声に怯えきった音がもれる。

男は慣れた手付きで少女を荷台から下ろしていき別のトラックに移動させる。

奥で小刻みに震えて縮こまっているのを視認し、冷笑を浮かべて扉を閉めた。




「お前とはまだまだ長い付き合いになるかもな。今度は五人で頼むぞ。とびっきりの美女でな」




不気味なほど音のしない車が闇夜に消えていく。

いつも去り際に残される雑な依頼。

しかしそんな無茶にももう応える必要はない。

一つ大きな任務を終えた男もまた静かに夜へと溶け込んでいった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 双黒 , 過去編   
作品ジャンル:アニメ
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煉華(プロフ) - あきさん» あきさん、ありがとうございます!久しぶりすぎてどうかなと思ったのですが、アニメ放送開始したからか見てくださる人が多くて安心しました。頑張ります(^^*) (2023年1月27日 21時) (レス) id: 4710ee5a2a (このIDを非表示/違反報告)
あき - 続編おめでとうございます!ちょうど先週辺りから読み始めたのでタイミングが良かったです笑これからも頑張ってください。 (2023年1月26日 21時) (レス) id: 3fb64841ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 20時

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