22.無声映画のキスシーンのように ページ23
22.無声映画のキスシーンのように
＊
『わー！海だ！』
車を走らせて1時間ほど。
ジョングクが連れてきてくれたのは夜の海だった。
堤防のところに車を止めて海沿いを歩く。
ジョングク、ライダースジャケットなんか着ちゃってさ。潮風でダメになっても知らないよ。
私の一歩先を歩くジョングク。明るい茶色の髪の毛は度重なるカラーリングで痛むはずなのに、風にサラサラと靡いてこっちが羨ましくなるくらい。
ふと、立ち止まったジョングクが振り向く。
「ここ、連れて来たいってずっと思ってた。」
やけに真剣に言うジョングクがおかしくて口角が上がる。
『…ずっと？』
「うん。Aって海好きじゃん、昔から」
『よく覚えてるね』
「何年一緒にいると思ってんの」
『…』
自然に、私の小さな手はジョングクの大きな手にすっぽりと包まれる。ジョングクはそのまま繋いだ手を前後に揺らしながら私を時々見ながら歩いた。
心底、
…この人が愛しいと思った。
この人が大好きだと思った。
だから不安だった。いつも。
ぎゅっと繋いだ手に力を込めれば、ジョングクも同じようにぎゅっと隙間なく指が絡む。その強さに不安や不満が少しだけ消えた気がした。
…この手でほかの女の子も触ったの？
なんて聞く勇気はないよ。
暫く歩いて、誰もいない砂浜に腰を下ろした。ジョングクの肩に頭を預けて、体をくっつけ合えばここは、私達だけの空間。
遠くの工業地帯のライトが海面に反射してキラキラと光っている。
「A」
見上げると、優しく微笑むジョングクの顔がゆっくり近づいた。
「好きだよ、」
唇が触れ合う寸前。
小さく囁いたその言葉で私を縛るジョングクが本当に、狡くて、愛しい。
まるで無声映画のキスシーンのように、あたりは静かで、私達の吐息だけが海に溶けた。
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あゆみ(プロフ) - とても面白いです☆ハマりました。更新楽しみしています。 (2017年12月12日 8時) (
レス) id: 86fa8a8f70 (このIDを非表示/違反報告)
Marin(プロフ) - とても面白いです！更新本当に楽しみにしております！これからも頑張って下さい！応援しております！ (2017年12月10日 20時) (レス) id: 19cce465dd (このIDを非表示/違反報告)
alexandrite_bbc(プロフ) - とてもおもしろいです！更新楽しみにしております！(*^ω^*) (2017年11月15日 23時) (レス) id: 1a1f2fe310 (このIDを非表示/違反報告)
ユニ(プロフ) - こちらこそすみません。これからも投稿頑張って下さい！応援しています！＾＾ (2017年8月29日 21時) (レス) id: 6828dd9952 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - ななさん» ありがとうございます！ (2017年8月29日 19時) (レス) id: e2425b42ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：R
| 作者ホームページ：http://twitter.com/12O4cm
作成日時：2017年8月27日 14時
