21.曇りのち曇り ページ22
21曇りのち曇り
＊
鏡の前で、最終チェックする私は滑稽じゃないだろうか。
心の中は分厚い雲で覆われているようで、決して晴れやかなものではないけれど、これで何か変わるかもしれないとも、思っていた。自分でも驚くぐらい、冷静だった。
『…よし。』
約束の時間の5分前。
もうすぐ着くとメッセージが入っていた。
もう降りちゃってもいっか。
エントランスまで降りてみると、ちょうど見慣れた黒い車がマンションの前に横付けた。助手席側の窓が開いて、ジョングクの顔が覗いた。私は小さく手を振ってそこに駆け寄る。
「中で待っててって言ったじゃん。危ないよ」
『…だって、』
「あ、楽しみにしてくれてたの？」
『そりゃ、ね？』
「俺も楽しみだった。」
ジョングクが運転席から降りて、助手席のドアを開けてくれた。
「どうぞ、お嬢様(笑)」
『からかってるでしょ(笑)』
そうして当然と言うように、私の手を握って段差に転ばないようにしてくれるジョングクが、なんだかいつもより大人に見えた。子どもの頃はどっちかと言うと私がジョングクの面倒を見る方だったんだけどなぁ。
『…わ、ベルトは自分でできるよ』
「したいの。させて。」
丁寧に、シートベルトまで付けてくれたジョングク。ふいに距離が近づいて心臓があまく疼いた。
…あの香りはもうしなかった。
運転席に乗り込んでゆっくりとジョングクがアクセルを踏む。
免許を取ったばかりだから、こうしてジョングクが運転するところ、初めて見た。
車は見慣れたマネージャーさんのものだったけどなんだか新鮮で思わずハンドルを握るジョングクの横顔を見つめてしまう。
「ねえ見すぎ(笑)そんな見られたら緊張する」
『…だって、運転してるとこ初めて見たもん』
「似合う？」
ちらりと横目で見ておどけてウインクをするジョングクに自然と笑みが零れた。
『まあまあ様になってるね』
「うわー、厳しい」
あはは、と笑いが起きるのはいつぶりだろう。
『ね、どこ行くの？』
「それは、着いてからのお楽しみね」
…もういっそ、なかったことにしてしまう？
あなたの過ちには目をつぶって、今のこの時を楽しんでみても、いいんじゃないか。
どうしてもジョングクを目の前にすると、気持ちなんて呆気なく揺れてしまう。
だってまだこんなに、ジョングクのことが好きなんだから。
.
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あゆみ(プロフ) - とても面白いです☆ハマりました。更新楽しみしています。 (2017年12月12日 8時) (
レス) id: 86fa8a8f70 (このIDを非表示/違反報告)
Marin(プロフ) - とても面白いです！更新本当に楽しみにしております！これからも頑張って下さい！応援しております！ (2017年12月10日 20時) (レス) id: 19cce465dd (このIDを非表示/違反報告)
alexandrite_bbc(プロフ) - とてもおもしろいです！更新楽しみにしております！(*^ω^*) (2017年11月15日 23時) (レス) id: 1a1f2fe310 (このIDを非表示/違反報告)
ユニ(プロフ) - こちらこそすみません。これからも投稿頑張って下さい！応援しています！＾＾ (2017年8月29日 21時) (レス) id: 6828dd9952 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - ななさん» ありがとうございます！ (2017年8月29日 19時) (レス) id: e2425b42ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：R
| 作者ホームページ：http://twitter.com/12O4cm
作成日時：2017年8月27日 14時
