第五十二話 ページ9
鬼たちが拠点で揉めていることなどつゆ知らず、私はベッドの上でぼんやりとしていた。
そういえば、あのパスワードは分かったのだろうか。
☆
「こちらです」
播磨院長の罪を暴く配信が行われる前。
私と耕一さん、孝さんは院長室内にあるシェルターを訪れていた。
隠密性の低い鋼鉄の扉を押し開け、私たちはシェルター内に入る。
「こんなところに隠してあったとはな」
呟いたのは孝さんだ。
シェルター内にはテレビやソファ、ローテーブルの他に電話やPCが設置されている。
扉は一度ロックしたら外からは一切開けることはできないようになっていた。
もし人質たちに逃げ込まれでもしていたら相当厄介なことになっていたであろうことは、想像に難くない。
「さて、どこから調べるか……」
言いながら、孝さんは入口付近にあったPCを慣れた手つきで操作し、一番左にあった地図のアイコンをクリックする。
開いたのはこの病院の案内図……ではなかった。
「地下四階?」
私はその違和感を声に出す。
この病院は地下一階までのはず。
「早速当たりを引いたようだな」
孝さんがさらに地下四階の表記をクリックすると、画面が切り替わる。
「地下四階につながるのは、ここのエレベーター一つのようですね」
私は画面を指さしながら言った。
「……配信までまだ時間はあります。行きましょう」
耕一さんを先頭に、私たちはシェルターからそのエレベーターへと向かう。
「搬送用」というプレートの貼られたエレベーター。
下行のボタンを孝さんが押し、私たち三人はエレベーターに乗り込む。
「ここが……」
孝さんはタブレットを取り出して操作方法を確認すると、さっそく実践にうつった。
「Please enter the password.」
出現したB4のボタンとともに、パスワード入力を求める女性の機械音がエレベーター内に響く。
「あったぞ。ここで間違いない」
「パスワード、ですか……」
耕一さんがつぶやく。
要求されている入力文字数は十一桁。
しかも数字ではなく、アルファベットで。
孝さんがタブレットを無線でつなぎ、情報を読み取ろうとするも、その速度は非常に遅い。
「できそうですか?」
「十一桁もある。片っ端から試してもひと月はかかるだろうな」
「パスワードを知っている人間は」
「事務長の大隅だ」
耕一さんと孝さんのやり取りを聞きながら、私にも何かできることはないかと考える。
「何とかして吐かせますか?」
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月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます!!!そらえびさんは神か??? (3月24日 20時) (レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます!設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます! (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます! (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらえび | 作成日時:2023年12月4日 22時