第五十一話 ページ8
拠点に集まった鬼たちは面を外し、皆沈痛な面持ちを見せている。
「私、もうやめたい」
沈黙を破ったのは、亜理紗だった。
「お前、今更そんなことできると思ってんのか!」
怒鳴る流星に、亜理紗は怒鳴り返す。
「思ってない!!でもっ!もうこれ以上Aちゃんを巻き込みたくない!!」
「っ……!」
Aの名前が出たことで、流星は明らかに動揺した。
耕一以外の他の面々も、明らかに狼狽えている。
「皆だって思ってるでしょ?!Aちゃんは本来何の罪もない、私たちと同じあいつらの被害者じゃん!!なのに何で、誰よりも傷ついて苦しんでるの?!私たちの目的はあの子を傷つけることじゃないでしょ?!」
「それは……そうだけど……」
口を開いたのは雄吾だ。
流星も雄吾も、彼女の生い立ちを知ったうえで、それでもAが知事の娘であることに嫌悪感を拭えないでいた。
現在のしおらしい態度は、やはり目の前でAが撃たれるところを見たのが原因だろう。
復讐のため鬼になったとはいえ、元はただの一般人。
血を流しながら自分たちと過ごすのが「楽しい」と微笑んだAの姿は、彼らの決心に罅を入れるには十分すぎた。
「せめて、今からでもAちゃんを解放してあげようよ!ねえ!!」
亜理紗は耕一を睨む。
「それは出来ません」
耕一は、亜理紗の発言を一蹴した。
「何でよ?!あんただって……!!」
「彼女本人が望んだことだからです」
冷酷、かつ淡々と耕一は告げる。
「一度、彼女に解放されたいか訊ねましたが、答えは『いいえ』でした。今回彼女が隊員探しに参加したのも、本人の希望です。本人が望んでいる以上、彼女には我々の手駒となってもらいましょう」
「……あなた自身は、Aさんのことをどう思っているんですか?」
訊ねたのは常陸だ。
「正直、あなたはAさんに対して何か特別な情を抱いているようにしか……」
「そうですね、否定はしません」
他の面々も気になっていたことを、耕一はあっさりと肯定した。
眉一つ動かさず、普段通りの無表情で。
「ですが、それが何だというのでしょうか。今更彼女の境遇に同情したところで、積もり積もった恨みや復讐心は消えない。鬼から人に戻ることはない。それは皆さんも同じでしょう」
耕一は言葉を切り、鬼たちを見回す。
「私たちは必ず目的を果たさなければならない。ここまで巻き込んでしまった、Aさんのためにも。いいですね?」
鬼たちは、頷くほかなかった。
682人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます!!!そらえびさんは神か??? (3月24日 20時) (レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます!設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます! (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます! (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そらえび | 作成日時:2023年12月4日 22時