第四十八話 ページ5
ICUの扉を開けたのは青鬼だった。
後ろで、黒鬼と赤鬼が銃を構えている。
人質たちは何事かと彼らの方を見た。
「AさんがSIS隊員に撃たれました」
人質たちに動揺が走る。
皆の視線が長門知事に集まった。
彼女は目を見開き、口をぱくぱくとさせているが、何の言葉も出てこない。
青鬼の声には抑揚がなく、ひたすらに淡々としていた。
「武蔵先生、手術をお願いできますね？」
「……Aさんの容体は？」
「今は意識を失っています。撃たれたのは肩で、止血処置はしていますが……」
「わかりました。若狭先生、行きましょう」
「っ、はい！」
「待って！」
呼び止めたのは長門知事だった。
彼らは振り向き、赤鬼と黒鬼は銃を知事へと向ける。
「……娘が死んだら、許さないわ」
武蔵裕子は思わず眉をひそめた。
ここに入れられた直後、娘を殺せとわめいていたのは裕子も目にしている。
同じ母親として、信じられない言動だった。
「心境の変化がお早いですね」
応えたのは青鬼だ。
「あなたには関係のない話でしょう」
「それもそうです。あなたが彼女をどう思っていようと、我々はどうだっていい」
「……そうでしょうね」
踵を返し、鬼たちとともに裕子、若狭はICUを後にする。
「Aさんの血液型はA型のRH+。輸血パックは足りていますか」
「ええ。その型なら問題なさそう。でも二人でオペは……最低でもあと一人欲しい」
「それなら問題ないでしょうね」
裕子は青鬼とそう話しながらAの倒れている場へと向かった。
「え、常陸先生？！」
裕子がまず目にしたのは、Aの止血処置を続ける常陸だ。
常陸の娘、亜理紗も彼の手伝いをしている。
「すみません、武蔵先生。詳しい話はあとで。オペには私も参加します」
「……はい、わかりました。若狭君、ストレッチャー」
「はい！」
裕子はAの状態を確認しながらつぶやいた。
「弾は抜けてる。脈も呼吸もあるけど極めて弱い。急がないと」
若狭の用意したストレッチャーに四人でAを乗せ、手術室へと運ぼうとした。
その時。
「武蔵先生」
青鬼に呼び止められた裕子は目で合図をして若狭たちを先に行かせ、青鬼の方に向きなおる。
青鬼は、裕子に向かって深々と頭を下げた。
「Aさんを、どうかよろしくお願いします」
その合成音は、震えていた。
「……ええ」
そう言い残し、裕子はオペ室へと急ぐ。
今の自分がやるべきことは、Aを救うことだけだ。
そう自分に言い聞かせて。
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月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます！！！そらえびさんは神か？？？ (3月24日 20時) (
レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます！設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます！ (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます！ (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そらえび | 作成日時：2023年12月4日 22時
