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最終話 ページ28

「クソ……!」

武蔵刑事の声が、背後から聞こえる。
あと数歩で炎に身を包まれるだろうというその瞬間、強い衝撃が加わって私は床に倒れこんでいた。

「え?」
「やっぱり駄目です。俺は……あなたに生きていてほしい」

私を突き飛ばした張本人が、そうほほ笑む。
見上げた笑みが、その優しい声が私の脳をかき乱した。
でも、それに浸っている暇はない。
私は即座に立ち上がり、耕一さんの腰あたりに抱き着く。
追いついた武蔵刑事とともに、耕一さんを炎の中から引き出した。

「離せ!」
「絶対に離さない!」

勢いあまってバランスを崩して倒れた耕一さんの胸倉を、私はつかむ。

「私を死なせたくないのなら、あなたも生きてください!!」

こんなところで死んでも妹さんは喜ばない、なんて、私が言えるはずもない。
誰かの名前を借りるのではなく、私自身の言葉で語らなければ、きっと彼に想いは通じない。

「あなたが私の生を望むように!私もあなたに生きていてほしい!!」


「大和耕一!!あなたは生きるんだ!!」


「……ハッ、ハハハハハ!」

少しの沈黙の後、耕一さんは、声をあげて笑った。

「負けました。完敗です、あなたには」

そう言って、耕一さんは武蔵刑事に両手を差し出す。

「お約束通り出頭します。武蔵刑事」

その声には、全てを受け入れた穏やかさがあった。
武蔵刑事は彼に手錠をかけ、無線で県警側に報告を入れる。

「大和耕一…………確保っ!!」

言い終わると同時に、ようやくここにたどり着いたのであろうSIS隊員が、室内になだれ込んできた。
人質の保護に、耕一さんの連行。
もちろん、私も例外ではない。

「立て!」
「長門さんも、署までご同行願います」
「わかりました」
「ちょっと待ってくれ」

耕一さんを連行するSIS隊員に、武蔵刑事は声をかけた。
そして、武蔵刑事は耕一さんの目をしっかりと見据えて言う。

「俺も約束する。俺はもう、誰も死なせない」
「……そうですか」

一瞬立ち止まった耕一さんは、それに鼻で笑って答えた。

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設定タグ:大病院占拠 , 青鬼 , 大和耕一   
作品ジャンル:恋愛
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月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます!!!そらえびさんは神か??? (3月24日 20時) (レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます!設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます! (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます! (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そらえび | 作成日時:2023年12月4日 22時

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