第六十八話 ページ25
「彼らが選んだのは、我々のほうです」
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内、『愛する人』の得票数1,984,391。
『一億二千万人』の得票数113,915。
95%を『愛する人』が占めるという、圧倒的な勝利だった。
私は銃を下に降ろし、再び和泉管理官の後頭部に銃先を向けた。
「知事は見殺しか?」
武蔵刑事が訊ねる。
「見殺し?何の話ですか」
訝しげな武蔵刑事に対し、耕一さんは彼を小馬鹿にしたように告げた。
「知事と私に打ったのは、ただの生理食塩水です」
そう言って小瓶のラベルをはがし、下に貼られていたそれを見せつける。
「私は一言も、ウイルスとは言ってません」
瓶を投げ捨てた耕一さんに対し、武蔵刑事は「この野郎……!」と悪態をついた。
耕一さんはPC前に配置していたカメラに顔を向け、宣言する。
「視聴者の皆さん、これで百鬼夜行ちゃんねるの配信は終わりとなります。最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。では、ごきげんよう」
お礼を言うときのみ一瞬浮かべた胡散臭い笑みをすぐに消し、耕一さんは配信を終えた。
「大和、目的は遂げたはずよ。今すぐ出頭して」
和泉管理官の厳しい声をよそに、耕一さんは再び銃を構える。
「まだ暴かれていない罪があります」
「どういうことだ!」
「どうして私が鬼になったのか。その全ての始まりは、」
訊ねた武蔵刑事に、耕一さんは憎しみの籠った表情で銃を向けた。
「武蔵刑事。あなたなんですよ」
訝しげな表情を浮かべる武蔵刑事。
耕一さんは彼を警戒しつつ、手に持っていたスマートフォンを人質の方に滑らせた。
「因幡さん。これから起こることを全て記録して公表してください」
「どうして?」
「それがあなたの使命……ですよね?」
「……わかりました」
因幡は立ち上がり、スマートフォンを拾い上げる。
「俺がお前に何をした?」
表情を変えず、武蔵刑事は訊ねた。
「武蔵裕子さん!こちらに来てください」
戸惑い、動かない武蔵先生に、私は和泉管理官を狙いながら近寄る。
「あなたは私の命の恩人です。あまり手荒な真似はしたくない」
早く、とつま先でつつくと、武蔵先生はよろよろと立ち上がった。
武蔵刑事とアイコンタクトを取り、耕一さんに近づく。
耕一さんは彼女を捕まえ、用意していたカッターを突きつけた。
「和泉管理官、もう一丁持ってきてるんでしょ?背中の銃です。武蔵刑事に渡してください」
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月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます!!!そらえびさんは神か??? (3月24日 20時) (レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます!設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます! (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます! (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらえび | 作成日時:2023年12月4日 22時