第五十四話 ページ11
「耕一!あの人がパスワードを手に入れた!」
耕一が拠点に戻ると、みさきが嬉々とした表情でそう報告してくる。
人質内に鬼の仲間がいることは、既に孝以外の面々にも伝えていた。
耕一は口角を上げ、鬼たちに向かって言う。
「皆さん、ついに我々が追い求めていたものが手に入ります」
☆
配信も終わり、暇を持て余していると、青鬼が病室に入ってきた。
「Aさん、怪我の具合はどうですか?」
「平気です。痛み止めが効いているみたいで」
「それは良かった。では、一緒に来てください」
「……わかりました」
青鬼の合成音は、どこかぎこちない。
鬼の面を被っているところも、なんだか久しぶりに見た気がする。
つまりは、そういうことだ。
協力者の実力がどの程度なのかは知らないが、地下四階へのパスワードを手に入れるには十分すぎる時間が経っている。
私が、人として鬼の傍にいられるのはここまでなのだろう。
私と青鬼は白鬼、黄鬼と合流し、まずは人質たちのいるICUへと向かう。
先に室内に入ったのは白鬼と黄鬼だ。
少し待ち、私たちもICUに入る。
「A!」
聞こえてきたのは、母の怒号だった。
「知事」
青鬼の制止も聞かず、母はつかつかと私に歩み寄る。
「この馬鹿娘!」
バシッと乾いた音が響く。
まずはビンタ。
「このっ!この馬鹿ッ!!」
突き飛ばされ、よろけたところをもう一発。
「なんてことっ!なんてことをするの!!」
地面に倒れこんだ私の上に馬乗りになり、何度も何度も、母は私を殴る。
「今までっ!やってきたことがっ!全部無駄にっ!!」
「知事」
青鬼が彼女の後頭部に銃を突きつけたことで、彼女の動きはようやく止まった。
「これ以上やるなら今すぐ死んでもらうことになりますよ。Aさんの上からどいてください」
「……」
般若の様な顔を浮かべながら、母は立ち上がる。
差し出された青鬼の手を取り、私も立ち上がった。
「行きましょう、知事。地下四階へ。我々が探し求めていたあの場所へ」
「……あなたたちには、たどり着けない」
「十一桁のパスワード、ですよね?大隅事務長!」
青鬼は声を張り上げ、後ろを振り向く。
「教えてもらえますか?」
「私は……知らない」
事務長の答えを受け、青鬼は口の端だけで笑った。
「トリケラトプス」
その答えは、私たちの背後から聞こえてきた。
「それが答えです」
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月乃派(プロフ) - そらえびさん» ありがとうございます!!!そらえびさんは神か??? (3月24日 20時) (レス) @page31 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - 月乃派さん» リクエストありがとうございます!設定上全編通しては難しいのですが、少しだけ書きます! (3月24日 16時) (レス) id: 034df459ee (このIDを非表示/違反報告)
月乃派(プロフ) - あのー、できれば新航空占拠もやって欲しいです。時間めっちゃかかってもいいのでもし、よければ何卒お願いします🙇 (3月16日 23時) (レス) @page30 id: 67461f2801 (このIDを非表示/違反報告)
そらえび(プロフ) - minbutahuikbさん» ありがとうございます! (1月17日 15時) (レス) @page30 id: bea40306cd (このIDを非表示/違反報告)
minbutahuikb(プロフ) - 凄くおもしろかったです (1月16日 8時) (レス) @page30 id: 5e3e8dde78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらえび | 作成日時:2023年12月4日 22時