reject 【ybhk】

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中島が岡本くんとともに立ち去ったあと、薮課長はグラスワインを一気に飲み干した。


「なんか、飯を食う気なんかなくなったな。――おい、光。俺らも行くか」


「え、なんで――デザートがまだだよ」

八乙女が不満げに唇を尖らせると、薮は鼻で笑った。

「ふふ、デザートはお前だろ」

ボン、と分かりやすく八乙女の顔が赤くなった。


「んじゃ、総務課長。なっちゃん、また明日」


そう言って薮は真っ赤な顔の八乙女の肩を抱いて、席を立った。

あまりにその仕草が自然で違和感がないことに、逆に違和感がある。


「支払いは済ませておきますから、俺らの分のデザートも食べて帰ってください」

薮課長はデザートにアクセントを置いて、ふふん、と鼻を鳴らして帰って行った。



取り残されたのは腐女子の私たち。

「……結局、私らはなんだったわけ」

モヤモヤしてなっちゃんに答えを求めると、なっちゃんは盛大に溜息をついた。

「薮課長が八乙女主任を中島様に横取りされないための、芝居に使われたってとこですかね」

「タダじゃ、奢らないってことか」

私たちは顔を見合わせて笑いあった。


「あー、もうこうなったら全部食べてかえろっ」

「賛成でーす。ワインも残ってますよ、かちょー、飲みますか」

「飲む飲む。今日は飲む」



うひひひ、と私たちは笑い、薮と八乙女、そして中島と岡本の二組のカップルに乾杯をささげた。







---おしまい

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