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「かちょー。それって書くの大変なやつですか」
「詳細な報告書だからね。今日は徹夜で残業だね」
「徹夜で……残業……」
ぐるぐるぐるぐる。
頭の中をさまざまな妄想がかけめぐる。
スマートでカッコ良くて出世頭の薮が、なんでやたら八乙女の肩を持つのか?
我慢しきれなくなって、口をひらいたのは私だった。
「なっちゃん。
あの二人、今日は絶対に残業する。遅くまで」
「……ですよね……」
ぐるぐるぐるぐる。
ふたりともパスタを盛大にフォークに巻き付け、沈黙のまま平らげた。
そして、黙ってデザートに手を付ける。
「残業してんの、ちょこっと……見にいってみようか……」
悪魔の誘いに負けた私がそう言うと、なっちゃんはチョコケーキの最後の一口をゴクリと飲み込んで「うひひひ」と笑った。
「お疲れ様です」
「お先に」
スタッフが次々とあいさつを交わして退勤していく。
19時半。
さすがに日常業務をやり終えてしまい、居残る理由がなくなった。
隣の営業二課では、忙し気になっちゃんがコピーを取っていた。
八乙女主任はせっせとパソコンに向かっていて、報告書にとりかかっている様子だった。
薮課長はのんびりと長い足を組んでパソコンを見ている……どう見ても、仕事中って感じではない。
今夜のサッカーの試合でもチェックしてるのじゃないか、と私は疑った。
「ありがとう、今日はここまででいいよ。あとは俺らがやっとく。
お疲れさん」
パソコンから顔を上げた薮課長が、なっちゃんに愛想よく言った。
なっちゃんは「はあ」と、あいまいに返事している。
わかる。わかるよ。なっちゃん。
「俺ら」に撃ち抜かれたんだよね。
「じゃあ、お疲れさまです」
私はカバンとコートをもって立ち上がる。
それを見て、なっちゃんも急いで帰り支度をはじめた。
会社近くのカフェでなっちゃんと待ち合わせた。
「……かちょー、何時くらいに行きますか」
「なんだかんだ言って、22時くらいまでは残業してる社員がいるもんねぇ」
「じゃあ、22時半くらいに行きます?」
「そうだね……」
私となっちゃんの目的はただ一つ。
薮課長と、八乙女主任が夜のオフィスで行う残業を観察する。
――絶対にただの残業じゃないはず。
口には出さないけれど、妖しいイケメン二人がどんなことをやってるのか……興味深々だ。
「いやーん、本番やってたらどうしよう」
なっちゃんがうれしそーに身をよじった。
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冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい!しろくまさんの作品はどれも大好きです!これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます!よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2018年2月22日 16時