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「八乙女主任に中島建設さんはお任せになって、薮課長はぜひ昼食会に参加なさってはいかがかしら。
薮課長と伊野尾本部長、営業一課時代にはほんと仲良くお仕事されてましたでしょ。
積もる話もあるでしょうし」
今カノと元カノに挟まれて、せいぜい困るといいわ。
――昔から、好きな男子を虐めて愉しむ癖がある。
困って泣きついてくるのが、たまらない。
薮みたいなスキのないイケメンが困るのは、最高のご馳走だ。
……ドSと言うなら、そう呼んでもらってもいい。
否定はしない。
薮課長にお願いされたくらいで、ホイホイと私が言うことを聞くわけないだろ。
あくまで遠慮という仮面をかぶって、「おほほほ」と笑ってやる。
薮は一瞬考えるように視線を宙に泳がせ、それから小声で「じゃあ、取引しましょう」と言った。
「今度、食事をおごりますよ。――なっちゃんと、八乙女も一緒に呼びましょう」
そう言って、薮は口角をニヤリと引き上げて笑う。
――あの時と同じ笑い。
弱みを握っているのは私じゃなくて、アンタの方か。
私はあっさりと負けを認め、「ではお言葉に甘えて、代理で出席しますね」と微笑んだ。
「助かります」
薮課長はあくまでも低姿勢を崩さない。
「やぶ…課長」
取って付けたような言い方で、八乙女が薮を呼ぶ。
「――伊野尾本部長、大変申し訳ないですが、野暮用で、本日はこれで失礼します。
またお目にかかりますので、よろしくお願いします」
薮は伊野尾に握手を求めた。
やはり、スルリ、と薮の親指が伊野尾の手の甲を撫でる。
熱っぽい視線で伊野尾は薮の手を握り、「ぜひ次は……」と言いかけて言葉を飲み込んだ。
ふたりで会いたい。
多分、そう言いかけたんじゃなかろうか。
薮はブルガリのプールオムの香りだけ残して、八乙女を連れて会議室を出て行った。
伊野尾本部長の目が八乙女に冷たく注がれている。
あ、これは八乙女が今カノだと気が付いたな。
「では、伊野尾本部長。私で申し訳ないですが、薮課長の代行を務めます。
昔話でもいたしましょう」
私が場の雰囲気を取持つために冗談めかして言うと、伊野尾はかつてのお世話係に優しく微笑んだ。
伊野尾がまとう上品な香りは、やっぱりブルガリのプールオムだった。
---おしまい
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冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (
レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい！しろくまさんの作品はどれも大好きです！これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます！よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろくま
| 作成日時：2018年2月22日 16時
