検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:103,112 hit

4---やぶ ページ4

.


「部屋って言っても、まあ、元は倉庫だからさ、こんなもんなんだけど……いいか?」


言い訳しながら錆びついた引き戸を力を込めて開ける。

ギシギシキーキーと耳障りな音がして、いつもなら嫌な気がするところだけど、今夜は違う。

ひかるはしおらしく両手で小さなリュックを持っていて、白い息をふぅ、と吐き出してうれしそうに笑っている。


「俺、うれしいよ。ちゃんとした部屋って、うちを出てから初めてだもん」



10畳ほどのがらんとした空間が俺の城だ。

なんか、以前、イケナイ「葉っぱ」を育てるために使っていたとかで、壁にはずらっと棚が設えてある。


「こっちにトイレとシャワーがあって……あ、棚があるから、ひかる、使っていいよ。
俺の服はだいたいここに置いてるから、寒いんならコートとか貸してやるよ」

裸電球がぶら下がった中で、ひかるは珍しそうにきょろきょろと部屋を見回しながら、短くて乱雑な俺の説明をおとなしく聞いていた。




「……ねえ、俺、どこで寝たらいい?」

もっともな質問に、俺は部屋の隅のベッドを黙って指さした。

「……あれはやぶのだろ」

「いいよ、また寝床はどっかから手に入れてくる」

「でも、俺は居候なのに、やぶのベッドを取るわけにはいかない」



案外、強情なひかるに苛立って、「うぜぇな、俺がいいって言ってんだろ」と思わず強く言い捨てる。

「――うぜぇな、俺もいいって言ってるだろ」

ひかるが俺の真似をして、舌ったらずに言い、ふたりは顔を見合わせて笑った。

「じゃ、やぶ、今夜は一緒に寝よ?寒いし、ふたりの方があったかいでしょ」


確かに……壁と床と天井はあっても、暖房器具のないだだっ広い部屋は、屋外よりちょっとだけましという程度だ。

ひかるのかさついた唇はやっぱり青いし、顔色だってよくない。

荒れた指先も青ざめている。


「……わかったよ」




もうすぐ6時。


俺もひかるも今夜の稼ぎを互いに見せ合い、着替えをして、冗談を言い合いながら背中合わせに布団に入った。

――ひかるの体は頼りなく痩せていて、冷え切っていた。

家出してから、ギリギリの生活を送っていたことが伝わって来た。





帰るところがあれば、帰ればいいのに。





そんなことを思いながら、俺は眠りに落ちた。

5---ひかる→←3---やぶ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (264 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
369人がお気に入り
設定タグ:やぶひか , 薮宏太 , 八乙女光   
作品ジャンル:タレント
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

しろくま(プロフ) - 有さん» 有様、蔵之介様も素敵ですね!出来れば蔵之介様にはちぃ様を手込めにして欲しい←病気。情報屋のお話しはまた必ず書きますので、よろしくお願いいたします!懲りずに短編を連載中なので、そちらも。宣伝(笑)コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ありこさん» ありこ様、おはようございます。前作、めっちゃ長かったのに、ファンなんて…嬉しくて倒れそうです。ありがとうございます。少し時間をおいて、またこの二人でお話を書きますので、ぜひまた遊びにきてくださいね!きゅんきゅんしていただけるように頑張ります。 (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まっつんさん» まっつん様、おはようございます!楽しんでいただけて嬉しいです★今回はどーてーを光君に捧げる薮様がメインテーマと言う妄想話です(笑)どうぞこれからもよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あぁぁぁあー長瀬くん!!なるほど!私の脳内では勝手に佐々木蔵之介さんに変換されてました。笑 とっても面白くて、毎日楽しみにしてました!ありがとうございました!!わがままですが、情報屋の続きをもっと読みたいです(●´ω`●) (2018年1月9日 1時) (レス) id: 074c0f6b92 (このIDを非表示/違反報告)
ありこ(プロフ) - はじめまして、前作からしろくまさんのファンです。2人の出会いからラストまで始終可愛いくてきゅんきゅんしました。とても面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございました! (2018年1月8日 23時) (レス) id: 0a1f704509 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しろくま | 作成日時:2017年12月26日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。