22---やぶ ページ22
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夜の街で過ごすようになってから、あちこちで色んな奴らと顔見知りになり、いろんな噂話を聞くようになった。
――俺がどこにも属していない一匹狼だから、相手は油断して話をするらしい。
整理されていない話は、単なる噂話にすぎないけれど、系統立てて整理すれば立派に情報として「売れる」はずだ。
Kは自分の得意な色恋沙汰の情報で生きようとしているけれど、俺ならばもう少し荒っぽいことでも大丈夫だ。
ただ、俺の単細胞ぶりでは情報を集めても、分析することは難しい。
これをひかるにやってもらい、ふたりで情報屋をするのはどうだろう。
「なるほどねぇ……そりゃニッチな商売だな」
そいつは少し考えてから、「これは特別だから」と言って名刺を出した。
味もそっけもない堅苦しい名刺には、「弁護士」の文字。
「は?アンタ、弁護士?」
「そうだよ。苦学してこうなってるんだから、ちょっとはハリネズミ君にも見習ってほしいね。
ヒカル君に幸せになってほしいと思ってるのは、本当だよ。
そうでもなけりゃ、本名晒すなんてリスクを冒したりしないだろ?」
そう言って、そいつはジャケットにわざと裏返しで付けていたバッジを見せる。
ひまわりと天秤を組み合わせたモチーフ。
弁護士か……。
夜の街に立っていた子供が、弁護士にまで成り上がるにはどれだけの苦労があったんだろう。
俺とひかるだって、いつかは夜の街を泳ぎ切って、ふたりで笑える日がくるかもしれない。
「何か困ったことがあったら、いつでも連絡しなさい。ガキが世の中を渡るのはしんどいぞ?」
そいつは急に物わかりのいい大人の顔になって、俺の頭をコツンとたたいた。
「さ、もう話は終わりだ。もう少し食ってけよ」
俺はもう粋がるのはやめて、素直にそいつの好意に甘えることにした。
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しろくま(プロフ) - 有さん» 有様、蔵之介様も素敵ですね!出来れば蔵之介様にはちぃ様を手込めにして欲しい←病気。情報屋のお話しはまた必ず書きますので、よろしくお願いいたします!懲りずに短編を連載中なので、そちらも。宣伝(笑)コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ありこさん» ありこ様、おはようございます。前作、めっちゃ長かったのに、ファンなんて…嬉しくて倒れそうです。ありがとうございます。少し時間をおいて、またこの二人でお話を書きますので、ぜひまた遊びにきてくださいね!きゅんきゅんしていただけるように頑張ります。 (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まっつんさん» まっつん様、おはようございます!楽しんでいただけて嬉しいです★今回はどーてーを光君に捧げる薮様がメインテーマと言う妄想話です(笑)どうぞこれからもよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
有(プロフ) - あぁぁぁあー長瀬くん!!なるほど!私の脳内では勝手に佐々木蔵之介さんに変換されてました。笑 とっても面白くて、毎日楽しみにしてました!ありがとうございました!!わがままですが、情報屋の続きをもっと読みたいです(●´ω`●) (2018年1月9日 1時) (レス) id: 074c0f6b92 (このIDを非表示/違反報告)
ありこ(プロフ) - はじめまして、前作からしろくまさんのファンです。2人の出会いからラストまで始終可愛いくてきゅんきゅんしました。とても面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございました! (2018年1月8日 23時) (レス) id: 0a1f704509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2017年12月26日 1時