12---ひかる ページ12
---ひかる
お兄ちゃんと別れ、重い足取りでいつもの自動販売機まで戻って来た。
いつもの所に、やぶと……知らないやつがいた。
そいつはやぶにスマホの画面を見せていて、何か楽し気に笑っている。
軽やかで暖かそうな青いコートが似合う白い頬。
ふわふわの茶髪。
つややかな唇をやぶの耳元に近づけて何かささやき、ふふふ、と色っぽく笑った。
俺は痩せて顔色は悪いし、髪の毛はペタンコ、唇はいつもかさついてる。
キン、と冷たい空気が俺の喉を締め付ける。
「……やぶ」
声をかけると、やぶはスマホから顔を上げて、ふにゃり、と笑う。
息が白い。
やぶの鼻の頭は赤くなっていて、寒い中、ずっとここで俺を待ってくれていたことが分かる。
それなのに、やぶは「お疲れ。……大丈夫か?」と優しく俺をいたわった。
「うん……大丈夫だよ。やぶこそ、寒かったでしょ」
「これくらいなら、なんてことねぇし。
ひかる、こいつ、Kっていうんだ。さっき知り合って……こいつも、ひかるとおんなじ『仕事』してるってゆーからさ……なんか、参考になるんじゃないかって、連れてきた」
「はじめましてぇ、Kって言いますぅ。
さっき、やぶぅにヤバイやつから助けてもらったんだ。よろしくぅ〜」
「……ひかるです」
俺は最低限のことしか言えなかった。
そいつはふわりと笑って、「やぶぅから、最近この『仕事』始めたって聞いたよぉ」と言う。
「こーゆーの、けっこう大変でしょぉ。いくらでやってんのぉ」
だらしない口調でしゃべりながら、Kは核心をついた質問してくる。
仕方なく正直に答えると、Kは「ほへぇっ」と変な声を出す。
「えぇ、それって安すぎっ!俺ならもっと取るよぉ、そんな安〜いお金で寝ちゃダメだよ、それだと相場の6掛けだよぉ、もったいない……」
そしてクルリとやぶに向かい眉をしかめて見せる。
「やぶぅ、ひかるはこの『仕事』向いてないよ」
「へ……?」
「ひかるは、こんなことやったらダメだよ。もう手をひかせたほうがいい」
さっきまでのダラダラした話し方ではなく、きっぱりと言われて、やぶは困ったように頭を掻く。
「いや、別に俺がひかるに『仕事』させてるわけじゃねーしさ」
「……やぶは関係ない。
それに……それに、俺、食べるために身体売るしかないんだから、そんなこと言われる筋合いはないよ!」
Kに、俺は強く言ったつもりだった。
なのに、語尾は震え、ポロっと涙がこぼれていた。
369人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろくま(プロフ) - 有さん» 有様、蔵之介様も素敵ですね!出来れば蔵之介様にはちぃ様を手込めにして欲しい←病気。情報屋のお話しはまた必ず書きますので、よろしくお願いいたします!懲りずに短編を連載中なので、そちらも。宣伝(笑)コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ありこさん» ありこ様、おはようございます。前作、めっちゃ長かったのに、ファンなんて…嬉しくて倒れそうです。ありがとうございます。少し時間をおいて、またこの二人でお話を書きますので、ぜひまた遊びにきてくださいね!きゅんきゅんしていただけるように頑張ります。 (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まっつんさん» まっつん様、おはようございます!楽しんでいただけて嬉しいです★今回はどーてーを光君に捧げる薮様がメインテーマと言う妄想話です(笑)どうぞこれからもよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
有(プロフ) - あぁぁぁあー長瀬くん!!なるほど!私の脳内では勝手に佐々木蔵之介さんに変換されてました。笑 とっても面白くて、毎日楽しみにしてました!ありがとうございました!!わがままですが、情報屋の続きをもっと読みたいです(●´ω`●) (2018年1月9日 1時) (レス) id: 074c0f6b92 (このIDを非表示/違反報告)
ありこ(プロフ) - はじめまして、前作からしろくまさんのファンです。2人の出会いからラストまで始終可愛いくてきゅんきゅんしました。とても面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございました! (2018年1月8日 23時) (レス) id: 0a1f704509 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろくま | 作成日時:2017年12月26日 1時